新型コロナウイルス感染症の流行によって、研修が急遽リモートになり困惑している担当者は少なくありません。特に、新卒デザイナーの研修プログラムは各社のブラックボックスとして共有されることが少なく、緊急事態宣言下では交流によるナレッジ入手が一層困難な状況です。
2020年4月30日、デザイン組織のナレッジ共有会「#デザナレちょい見せ」(主催:株式会社ビビビット)は「リモートでどうやる?新卒デザイナー研修プログラム」をオンラインで開催。
株式会社キュービック、株式会社たき工房、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ポリゴン・ピクチュアズの各研修担当者をお招きし、これまでとコロナ禍での新卒デザイナー研修についてお話いただきました。本イベントの内容を一部抜粋してご紹介します。
【ゲストスピーカー】
- 篠原 健|株式会社キュービック 執行役員 CDO
- 藤井 賢二|株式会社たき工房 開発部門 執行役員
- 楠 薫太郎|株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム事業本部 デザイン部 副部長
- 二宮 渉|株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 人事総務部門 グループリーダー
デザイン思考力の最速成長の鍵はサイト製作
2020年度卒の新卒デザイナーが3名入社。技術ではなく思考・思想を伝えることをメインに置いた研修プログラムだったため、リモートになってもあまり困っていないと篠塚さんは語ります。
- デザイン思考のフレームワークを身に付けてもらうことに徹底しています。
- 研修課題は「サイトをデザインしてみよう」。基本的な作り方やコンセプトは提示しつつも、それ以降はリリースできる状態まで一人で進めてもらいます。
- 自身で決めたテーマに沿って、インタビュー・ペルソナ設計・カスタマージャーニーマップ・インサイトの抽出・ワイヤーフレーム・デザイン案・コンテンツ作成・デザインカンプなど、上流から下流まで一連の制作工程を進めてもらいます。
- フレームワークを徹底して教えるのは、実務がはじまっても何時でも立ち戻れるようにするためです。「自分はなにを作りたいのか」をしっかりイメージできれば、具体的な制作手段やスキル研鑽、また先輩への質問なども逆算で考えられるので、それが仕事の「型」として身に付いていくと考えています。
- 仕事の「型」が身に付けば、そこから応用することができます。仕事は応用だと思っているので、応用して色々なことにチャレンジできる人になってほしいです。
これだけでOK!!新人デザイナー研修構築 3つの掟
ここ数年は毎年20名近くの新卒デザイナーを採用。藤井さんは自社の新卒デザイナー研修には特徴的なポイントが3つあると示します。
- ポイント①「研修は配属までの慣らし期間」
新人同士で様々な研修メニューを行ってもらったり、終盤では10以上あるチームを順番に回りながらOJTも行います。徐々に会社に慣れてもらう・知ってもらうことに主眼を置いています。 - ポイント②「先輩のちょっと先を行く内容」
新人には実務で使用していない最新ツールも敢えて覚えてもらい、配属後に実務で使ってもらうことで先輩を触発する流れをつくっています。過去には、先輩が日頃提案していないような企画を考えてもらい、クライアントに持ち込んだりもしました。 - ポイント③「担当者が抱え込まない」
研修の専任者がいるわけではなく、デザイナーが研修を担当します。そのため、研修内容によってはすぐに外部にも依頼します。企業・担当者・新人の各レベルをしっかり理解し、可能な範囲で人材開発のゴールを定めることが大切です。 - リモート研修は、正直ドタバタしながらなんとか進めています。会社PCを自宅に郵送し課題を毎週一つ出しています。
成長パフォーマンス最大化のため研修で適正と意向を分析する
前半の半年間はスキル研修、後半の半年間はOJT研修と、研修期間はトータル1年間。楠さんは取り組んでいること・取り組もうとしているアイデアを交えながらポイントを示します。
- ポイント①「意向の整理」
新卒メンバーの当初の意向とスキル研修を通じての変化を、ログを残して分析します。 - ポイント②「ゴール分析」
スキル研修のレポートを基に数年後のゴールイメージを分析します。 - ポイント③「アサイン設計」
ゴールイメージから逆算して、OJT内容を設計します。デザイン制作は様々なスキルが密接に影響し合っているため、学ぶスキルや学ぶ順番は丁寧に設計する必要があります。 - リモートでのコミュニケーションはZoomを使用。長期間かつ様々な人が関わるので、リモートでもコミュニケーションの質向上に注力しています。
常設ルームを設置:新卒メンバーとチューターが常駐して、すぐに質問ができる環境。
レポートをカスタマイズ:進捗や課題感がより見えやすいフォーマットに修正。
人員の調整:チーム内でコミュニケーションのハブになる人員を設置し、Zoomでの会話を促進。
意識的な接点:オフラインでの何気ないコミュニケーションの喪失を見過ごさず、積極的にコミュニケーションを増やしていく。
どうやって乗りきった!?いきなりリモート研修
2020年度卒の新人が6名入社(うちデザイナー3名)。二宮さんは前提として、リモート化を短期決戦で進めるため、他社事例よりも自社の状況やメンバーに即した手段を意識したと語ります。
- グローバル・パートナーを考慮して、2017年時点でリモートワーク及びパイプラインを構築することを中期経営計画で掲げていました。2019年10月にはリモートワークの検証を実施していました。
- ポイント①「多岐に渡る研修メニュー」
時間をいくらでも埋められるほどの研修メニューが元々豊富にありました。どれぐらい対応パターンを持っているか洗い出し、オンラインで難しいものはやらないと即決しました。 - ポイント②「育成のプレッシャー緩和」
コスト負担や研修責任は人事にあると明確に伝えるなど、現場に対して育成のプレッシャーが緩和されるような施策を元々講じていました。現場に丸投げしないと進められない局面もいくつかありましたが、施策のおかげで軋轢なくスムーズに進みました。 - ポイント③「リモートワークの想定」
検証時は正直現場は乗り気ではなかったのですが、事前に想定して準備していたことが功を奏しました。 - 振り返れば、普段通りの研修と変わりなくリモート研修ができるか否かは事前準備の問題だけでしかなかったと思います。
Q&A
Q. オンライン環境でコミュニケーションを意図的に増やす取り組みとして、具体的にどのようなことをされていますか?
Q. 採用された方によって研修プログラムは変えていますか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
デザイナー採用担当の方は以下もチェックしてみてください。