インターネットで服を買う文化を確立したファッション通販サイト「ZOZOTOWN」、体型計測データをもとに一人ひとりに合ったサイズのアイテムを提供するプライベートブランド「ZOZO」、ダウンロード数1,300万を超えるファッションコーディネートアプリ「WEAR」……。
ファッションとテクノロジーを組み合わせた画期的なプロダクトを次々と世に送り出し、誰もが知る大企業となった株式会社ZOZO。その技術開発・サービス運用・デザインを担うのが、株式会社ZOZOテクノロジーズです。

画期的なプロダクトはどのように生み出されるのか? ファッション性とUI/UXを両立させる方法は? ZOZOテクノロジーズのデザイナー文化とは?
馴染みのあるプロダクトの裏側について、ZOZOテクノロジーズのデザイン部門を統括する、遠藤裕顕さんに伺いました。

遠藤裕顕/株式会社ZOZOテクノロジーズ
執行役員兼デザイン部部長

2005年、スタートトゥデイ(現 ZOZO)に入社。ZOZOTOWNなどのプロダクトに初期より携わる。2015年からはZOZOテクノロジーズにてクリエイティブ、デザイン部門全体の統括をおこなう。社員曰く“話しやすい空気感をもつ圧倒的なアイデアマン”。

“解決したい課題”をどう実現するか、を考える

ーーまずはZOZOテクノロジーズの事業内容について教えてください。

ZOZOグループが提供するサービスの運用や技術開発、デザインをおこなっています。具体的には「ZOZOTOWN」「WEAR」、プライベートブランド「ZOZO」のプロダクトの技術開発、UI/UXデザインや商品パッケージのデザインなど。それに加えデザイン部では、名刺やステーショナリーなどコーポレートのクリエイティブも担当しています。
僕自身の仕事は、クリエイティブの責任者としてデザインチームを統括すること。基本的には各プロダクトを担当するクリエイティブディレクターにクリエイティブは任せていて、適時相談に乗ったり、部門間の調整をしたり、デザインチームのマネージメントが普段の業務です。
また、新規事業の計画やプロダクトの企画などにも関わります

ーーデザイナーの方々が企画段階から携わることも多いのですか?

新しいことを始めるときは、意見やアイデア出しから関わることが多くあります。トップの基本的な構想だけを伝えられ、「ラフをつくってみて」と言われることから始まる企画も多いので、想像力はかなり鍛えられますね。
どちらにしても企画段階からデザイナーが関わるため、アイデアを目に見える形にするまでのスピードはかなり早いです。

ーーZOZOの画期的なサービスは、企画会議を積み重ねて生み出されていたんですね。では、そのアイデアはどのようにして発想されるのでしょうか?

どういったものが社会に必要とされているのか、自分たちはどういったものがほしいのかについて話し合って、形にしていくことが多いです。
プライベートブランドZOZOとZOZOSUITも、ZOZOの代表取締役社長である前澤がもつ個人的な悩みから生まれました。体型が小柄なためにサイズの合う服が少なく、ズボンを買っても裾上げが必要になる。その問題をテクノロジーで解決したい、という着想から企画が立ち上がったんです。

技術ありきではなく、解決したい課題をどうやって実現するかを考えるのがZOZOのプロダクトづくりの王道。課題に対して技術で実現する方法をデザイナーとエンジニアが考えることで、協業を達成しています。

デザインも企画も、“ZOZOらしさ”を体現する

ーーZOZOテクノロジーズのデザインにおいて、最も大切なことは何でしょうか?

“ZOZOらしさ”を体現する、つまり“いままでなかったような面白いものを生み出す”ことです。このプロダクトで自分たちはワクワクするのか?自分たちはカッコいいと思うのか?を常に自問自答しながらデザインに取り組んでいます。
デザインだけでなく、企画でも世の中を驚かせたいという思いがあり、そこから「ツケ払い(※1)」や「0円企画(※2)」が生まれました。
「ツケ払い」は言ってしまえば後払いサービスなんですが、できるだけ利用のハードルが低く感じられ、楽しくお買い物をしていただけるように、ネーミングにこだわりました。
※1…商品購入後、2ヶ月以内での支払いができるサービス
※2…ZOZOTOWN10周年企画としてサプライズで総額2億円相当の商品を無料にしたイベント

ーーZOZOらしさを体現することと、プラットフォームとして優秀なUI/UXが対立することはないのでしょうか?

ありません。自分たちがカッコいい・使いやすいと思うものをつくり出せば、自ずとユーザー体験は高まると考えています。それは前提として、自分たちの感性を信じているからできることでもあります。
特に前例がないプロダクトはリリースされるまでテストができませんから、普段磨いた感性がカギになりますね。ローンチしてからは実際のユーザーの行動データを見ながら、どんどん改善していきます。
もちろんA/Bテストや施策のシミュレーションなど、細部にもこだわり最適化していきます。

ーーユーザーの反応をみつつも、基本的には感性を軸においたデザインをされていたんですね。では特にZOZOTOWNに関していうと、デザインで意識されているポイントはありますか?

さまざまなブランドのショーケースとして商品が魅力的に見えることです。
7,000以上のブランドを取り扱うZOZOTOWNは、どんなブランドが並んでも魅力的に見えるようにしなければなりません。そのため、余計な味付けはしないようにしています。
プラットフォームに徹しつつ、でもなぜかZOZOTOWNに商品を並べると「カッコいい」となるようなデザインを目指しています。

自分たちも楽しみたい。数字では予測できない面白いものをつくる

ーーZOZOテクノロジーズは既存プロダクトの開発はもちろん、Amazon Alexaスキル「コーデ相談 by WEAR」のような新規事業の開発など、社名通りテクノロジーに強いイメージです。そこで働くデザイナーにも、技術的な知識やデータ分析のスキルが必要とされますか?

特段求めません。それよりもデザイナーには、感性や想像力を伸ばしてほしいと考えています。新しくて面白いことを始めるときに、数字では予測できないことも多いので。
あわせてデザイナーには、ZOZOグループの理念やビジョンへの共感も大事です。当然ですがデザイナーは、サービスやプロダクトに思想や哲学を内包して、デザインに落とし込むことが求められます。ですから理念・ビジョンへの共感はとても重要です。
逆にいえば、それさえあれば技術は後から身に付けられます。
そのため弊社には、他部署でデザイン未経験の社員であっても、理念への共感と感性を示せばデザイナーになれる社内公募制度があります。

ーーZOZOテクノロジーズでは「Instagramの9投稿(※)」のようなユニークな採用施策が実施されていますよね。それらも理念への共感や感性を見るためにおこなわれているのですか?
※…2020年度の新卒デザイナー採用における選考課題。Instagramの9つの投稿で自分を表現するというもの。

実施する第一の理由は、僕たちが選考の過程を楽しみたいし、応募者にも楽しんでほしいからですね。他社がやらないような面白いことや、みんなを驚かせるようなことをしたいという想いから、採用企画も考えています。

とはいえデザイナーとしての感性や技術を見たいという想いも、もちろんあります。ここでいう感性や技術とは、「見た人をどういう気持ちにしたいかを設計して、想像して、それを表現に落とし込む能力」です。
Instagramの投稿だけでも充分その能力は測れたと思います。見た人に与える印象をしっかり設計できている人や特殊な感性を持った人は、審査を通過しています。

ーーそういった基準で採用されたデザイナーのみなさんは、どのような方々ですか?

感性も良いし、会社やサービスのことが大好きな人たちが多いです。仕事面でも優秀だと思います。ただそれだけではなく、良い意味で理解不能です(笑)。一見理解不能なことに全力で取り組むというのは、弊社のデザイナー全体の文化といえるかもしれません。
例えば、ある日いきなり業務用のポップコーンメーカーを自費で買ってきて、オフィス内でポップコーンをつくってスタッフに配っているデザイナーもいます。自分たちがもっと楽しく働けるよう、オフィス環境を整えているんですよ。
カッコいいと思うことやワクワクする気持ちを貫く“ZOZOらしさ”を、職場環境にも積極的に反映してくれているんだと思います。仕事で大事な部分は押さえつつ、楽しいことにも全力で取り組んでいますね。

ーー「楽しいことに全力で取り組む」という文化はもともとあるのでしょうか?

もともと、遊び心と個性を大切にするのがZOZOの文化だと思います。デザイナーには社歴が長い社員が多いので、自分たちの好きなZOZOカルチャーを伝えていきたいという想いがあります。
そして実際にそのやり方で、これまで成長を続けてきたという自負もあります。

ーーデザイナーのみなさんが積極的にZOZO文化を築いてこられたんですね。では最後に、ZOZOテクノロジーズの今後の目標を教えてください。

ZOZOグループはこれから、世界にも通用するプロダクトを生み出していきたいと考えています。そんななかでデザイナーは、サービスやプロダクトを利用するユーザーの感情の設計と表現において、最も価値を発揮できます
クリエイティブのゴール設計をして、どういう表現でそこまでアプローチするかを考えるデザイナーの役割を、事業全体においてこれまで以上に全うしていきたいです。そのためにデザイナーがやれることはまだまだあると思います。

<執筆:宮田文机>
<取材・編集・撮影:シンドウサクラ>