今回の採用成功インタビュー:株式会社トラストハブ

株式会社トラストハブは、2019年5月に設立。スタートアップ投資を行うニッセイ・キャピタルのアクセラレータープログラムの採択を経て、2020年3月に遊戯王カードのECサービス『Clove(クローブ)』(β版)をローンチしました。「コレクターズアイテムを安心して取引できる世界を作る」をミッションに掲げ、商品一点一点を丁寧に鑑定・説明するサービス運営を特徴としています。
株式会社トラストハブ
CEO
大懸 剛貴さんTwitter:@daikenen
京都大学理学部数学専攻卒。東京大学法科大学院在学中司法試験合格。投資運用会社にて企業分析・投資事業に従事した後、株式会社トラストハブを共同創業。

実務経験年数でスクリーニングしないほうが良かった」そう語るのは、株式会社トラストハブのCEOを務める大懸さん。
同社はサービスのユーザビリティを強化するため、『ViViViT』(デザイナー特化のダイレクトリクルーティングサービス)を用いて、UX/UIデザイナー1名を新卒採用しました。

サービスをローンチしたばかりのスタートアップ企業が、なぜ唯一のインハウスデザイナーとして新卒学生を採用したのか。今回は、インハウスデザイナーの採用背景や重視した選考ポイントなどを伺いました。

今回の採用成功ポイント

▼テーマ
“実務経験年数に縛られない”デザイナーの見極め方

▼課題
・アウトソースはコミュニケーションコストが大きい
・デザイナーの選考基準がない
・新卒を採用すべきか判断材料が足りない

▼対策
・インハウス体制の強化に方針転換

・「なぜ〇〇なのか?」徹底してデザインの意図確認
・インターンでプロジェクトを一つ任せる
▼成果
・新卒のUX/UIデザイナーを1名採用

短期のアウトソースより、中長期のインハウス

ーーまずは、御社の事業内容について教えてください。

当社は、遊戯王カードのECサービスClove』を提供しています。サービスをローンチして間もないため現状は遊戯王カードに特化していますが、ゆくゆくはトレーディングカードやコレクターズアイテム全般を取り扱っていきたいと思っています。

会社の活動目的として、「コレクターズアイテムを安心して取引できる世界を作る」というミッションを掲げています。コレクターズアイテムの市場は「偽物の流通撲滅」が至上命題でして、最近は特にフリマアプリで偽物を買ってしまう事件が多発しています。売り手側にも悪影響があり、本物なのに信じてもらえず適正価格より安く売らなければならないなど、真っ当な売り手が損をしてしまう問題もあったりします。

そういった課題を解決するため、『Clove』は真贋鑑定に一番こだわっています。本物だけを流通させ適正な価格相場を保たせながら、買い手も売り手も安心して取引できるプラットフォームを提供したい。フリマなら『メルカリ』、衣料品なら『ZOZOTOWN』、そしてコレクターズアイテムなら『Clove』と呼ばれるぐらいまで成長させたいですね。

ーー『Clove』の開発要員として、なぜインハウスでデザイナーを採用されたのでしょうか?

Clove』はtoCのWebサービスなので、継続的に使っていただくためにユーザビリティを高め続けることがとても重要です。ローンチ初期といえど、UX/UIデザイナーは必要不可欠な存在だと捉えています。

当初は外部のデザイナーにアウトソースしていたのですが、意思疎通に時間がかかってしまい細部を詰めるのに苦戦していました。「安心して取引できる」というコンセプトから具体的なデザインに落とし込まないといけないので、まずビジネスモデルやサービスの本質から理解いただく必要があるのですが……アウトソースだと日々のコミュニケーションコストがとても大きいなと。

デザインの一貫性を保ちながらアップデートしていきたいとも考えていたので、長期的にコミットできるフルタイムのインハウスデザイナーを採用しようということになりました。

ーー採用活動は具体的にどのように進めましたか?

『ViViViT』でのスカウト活動から初回面談までは、基本的に私一人で進めました。唯一のデザイナーとして当事者意識を持ってコミットしてくれる方を採用したかったので、面談では会社やサービスのビジョンなどを積極的に話しました。まずは会社の目指す世界を理解してもらう、そして共感してもらえるように意識してコミュニケーションを図りました。

初回面談でスキル・経験・マインドなどを一通り確認し、良かった方にはその後1日体験入社と選考課題を案内しました。そして、最後は最終面接で合否を決めました。

デザイナーの思考を探る、徹底した意図の確認

ーー採用活動でなにか課題はありましたか?

デザイナーの選考が一番難しい課題でした。デザインの専門知識を持った者もいないですし、はじめてのデザイナー採用なので比較するような基準もない。

ですので、『ViViViT』でスカウトを送る際にスクリーニングはあまり厳しくせず、まずは色んな方と面談するように心がけました。時間はかかってしまうので効率的ではないのですが、たくさん会ったほうが良し悪しの基準を多少なりとも掴めると思ったんです。

面談を重ねるなかで、ポートフォリオのビジュアルを見ただけではアウトプットの真意がわからないと強く感じるようになりました。見るべきポイントが正直わからないので……パッと見たときに「上手い」「綺麗」としか表せない。

そのため、より深く評価する対策として、例えば「なぜこの位置にボタンがあるのか」など一つひとつデザインの意図を確認するようにしました

ーー論理的思考を重点的にみられたということでしょうか?

そうですね。ビジュアルを作るセンスやスキルはもちろん大事ですが、それよりも目的から逆算してどこまで考えられているかを深掘りました。

UIの細かな点を訊いたとき、逆算して考えられている人とそうでない人では、思考の広さ・深さに大きな差がありました。サービスコンセプト・ブランド・ユーザー視点などから演繹的に理由付けできているか、UX/UIとしてブレずに落とし込めているか、それを一つひとつ確認しました。

また、1日体験入社ではサービス改善の模擬提案もしてもらいました。ユーザー視点で考えられているか、PDCAを回していく改善思考はあるか、論理的にディスカッションできるかなど、実際に一緒に働くことになった場合を想定して行いました。いわゆるデザイン思考(※1)ともいえるかもしれませんが、これらはサービスの品質を高めていくための重要なマインドセットだと考えています。

※1…デザインにおける思考方法・手法を用いて、ビジネス上の問題を解決するための考え方

デザイナー初採用で感じた、経験年数よりも“大切なこと”

ーー今回は新卒学生を採用されたと伺っています。はじめてのデザイナー採用ですが、正直不安はなかったのでしょうか?

不安がなかったといえば嘘になりますが、即戦力級のスキルと高い論理的思考力を持っており、他に面談した社会人の方々と比べても遜色はありませんでした。1日体験入社では大変熱意を持ってクリティカルな改善提案をしてくださり、それも評価の後押しとなりました。

ただ、先輩デザイナーが一人もいない環境ですし、サービス全体のデザインを推進するポジションでもあるので、やはり判断は慎重にしなければならないと思いました。ミスマッチにならぬようお互いをもっと知る必要があったので、1日体験入社の後に追加で2週間のインターンをお願いしました

ーーインターンでは具体的にどういったことを任されましたか?

インターンでは、購入者に商品を郵送する際に同梱するサンクスカードの制作をお願いしました。デザイン案の作成から印刷業者とのやりとり、実際にサンプルを作るところまで、プロジェクトとして一通りお任せすることにしました。

しっかりコミュニケーションをとって要件定義できるかフィードバックを基に改善できるか印刷業者と契約してサンプルまで作れるかなど、プロジェクトを推進させる自走力を中心に見ました。結果、一連の制作プロセスを力強く進めていただき、1日体験入社ではわからなかった能力を深く知ることできました。また、わからないことはすぐ質問してくれたり自分で調べてくれて、積極的に理解しようとする主体性も高い評価につながりました。

この自走力や主体性が内定の決め手ですね。設立間もない会社の唯一のデザイナーになるわけですから、実務経験が豊富だったとしても受け身な働き方では環境的にやはり辛いと思います。スタートアップで働くうえでは「行動する強さ」が最も重要だと最後は判断しました。

初回面談から当社の事業に高い関心を示していただき、デザイナー社員第1号という責任あるポジションにも意欲的でした。総合的に見て相性がとても良かったのだと思います。

ーー最後に、今回の採用活動を振り返って一言お願いします。

実務経験年数は、候補者をスクリーニングするうえで妥当な指標の一つだとは思いますが、今回の採用においては重要ではありませんでした。逆にあまり考慮しないことで可能性が広がり、当社が求める方に巡り会えたと感じています。

新卒だと同職種の先輩がいないことの不安は大きいと思います。しかし、デザインのフィードバックやヒントの提供がデザイナーにしかできないわけではありません。デザインのスキル・知識がなくても、ユーザー視点で考えること自体は私やエンジニアにもできます。

大事なのは、メンバー全員がユーザー視点を持って「より良いデザインとはなにか」を考え続けることだと思います。今回デザイナーを採用したからといってそこは変わりません。今後もチーム全員の思考を掛け合わせながら、サービスの品質をもっともっと良くしていきたいと思っています。

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<取材・執筆・編集:富山 有樹(株式会社ビビビット)>
<撮影:山津 昌輝(株式会社ビビビット)>