2018年5月に、全ての事業を子会社化してグループ経営へと舵を切ったクルーズグループ。
子会社化したことで「グループ全体をどのようにブランディングしていくのか?」という問題が立ち上がり、グループブランド戦略室を設置するとともに、クリエイティブ統括の役職を設けました。その統括に就任したのが、当時まだ中途入社してから1年ほどだった黒木主唯さん。
今回はグループブランド戦略室の立ち上げや、クルーズグループが目指すグループブランディングについて伺いました!

諸戸友(もろと ゆう)/クルーズ株式会社 執行役員
最高広報責任者CBO 社長特命執行部

新卒でリクルートの代理店に入社。その後ベンチャー企業の採用コンサルをおこなうアイ・パッションの立ち上げに参画。1000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズに入社。社長秘書、組織構築、広報と幅広く担当し、最高広報責任者CBOに就任。
黒木主唯(くろき しゅい)/
クルーズグループ グループブランド戦略室 クリエイティブ統括

サイバーエージェントに新卒入社。アートディレクターとして子会社やクリエイティブスタジオを立ち上げる。2017年CROOZ TRAVELISTにクリエイティブ責任者として参画。2018年に横断組織「グループブランド戦略室」を立ち上げクリエイティブ統括に。

ーーまずはおふたりのご経歴を教えてください。

諸戸さん

ファーストキャリアは求人広告の営業マンで、1日100件以上の電話や飛び込み営業をおこなっていました。その中で、ベンチャー企業の経営者と仕事をすることが面白いと思い始めたときに、直属の上司が起業することに。立ち上がったばかりのベンチャー企業には高くて簡単に手を出せない大手の求人サイトの代わりに、ベンチャーに特化した求人サイトをつくろうと、アイ・パッションという会社を先輩と立ち上げました。

そこで5年間、採用コンサルティングという形で1,000人以上の経営者と会っているうちに、伸びる会社と伸び悩む会社が存在することが分かってきたんです。そして伸びている会社は何が違うんだろうと思い、採用領域だけにとどまらず、伸びる会社の経営全般に携わっていきたいと考えるようになり、クルーズにジョインしました。

飛び込み営業をしていた頃から付き合いがあり、事業を何度も変えながらずっと利益を伸ばしている会社なので、ぜひ働いてみたいと思っていたんですよ。
入社してからはPR、IR、投資、MA、子会社の予実管理、人事労務など……いろいろなことをやっています。

黒木さん

学生向けのイベントでの話もうまいですし、諸戸さんがフロントにいるのはグループ的に心強いんですよね。クルーズのムードメイカーです。
飲み会でもそのキャラクター通り、完全な盛り上げ役ですね(笑)。

僕は大学院までプロダクトデザインをやっていたんですが、就職活動ではメーカーに興味をひかれず、サイバーエージェントに内定をいただいて入社しました。
もともとは具体的にやりたいことがありませんでした。ただ、デザインの力を使って最前線で大きな仕事がしたいなと思いだけはあったんです。
そのため、当時一番勢いのあったゲーム事業部で内定者アルバイトをはじめ、以降の4年間はずっとゲーム事業部にいました。
2年目のときに、当時13社ほどあったゲーム関連の子会社を事業部としてブランディングしていこうとなり、僕がクリエイティブ責任者としてをやらせてもらいました。

諸戸さん

2年目で?簡単にできることではないと思うんだけど、何で任せてもらえたの?

黒木さん

内定者の頃から、200人規模の忘年会の幹事であったり、社内活性化用のポスターデザインや写真撮影などを自主的にやっていたんですね。大学時代に作品の撮影をしていたこともありカメラも得意でした。
子会社でそんなことをしているうちに、僕に声をかけてもらえるようになっていました。
だから事業部でブランディングをやろうというときにも、手を上げたらやらせてもらえたという経緯です。

諸戸さん

そういうところだよね、何でも手を上げてやる挙手力。そうやってチャンスを得る人は多いですよね。
社内ポスターのデザインとか写真撮影とかイベントの幹事とか、必ずしも業務上やらなくてもいいことそれをどんどんやっていくことで、チャンスが広がっていくこともある

黒木さん

そうですね。経験も実績もないので、やる気でカバーという面もありましたけど(笑)。
でもどんどん手をあげることで信頼を得られたかなと。「とりあえず黒木にやらせれば問題ないね」となってくれたら良いなと思って、やっている部分もありました。

一方でメイン業務のゲームは、職能がピンポイントなものになります。ゲーム職人を目指すのではなく、もっといろいろなことがやりたいなとちょうど思っていたところ、いまのCROOZ TRAVELIST(トラベリスト)の代表が事業を起こすという話を聞きました。ビジョンが面白く、メンバーにも優秀な人が多かったので、2017年の7月にジョインしたんです。

「グループをどうしたいのか?」を伝える組織が必要だった

諸戸さん

そこからどんな入り口で、グループブランディングをお願いすることになったんだっけ?

黒木さん

クルーズグループ全体の社員総会のアンケートですね。全員に依頼を投げたやつです。

諸戸さん

そうだった。半年に一度おこなっているグループ全体の総会があって、終わったあとにアンケートをとることになったんです。そのアンケートで総会を運営したい人いますか?という項目に、黒木さんが手を挙げてくれた。

黒木さん

入社して1〜2ヶ月後に初めて全社総会に参加して、正直「物足りない!」と思ったんですよ(笑)。そのときは運営メンバーにデザインがわかる人がおらず、デザインに注力できていなかったこともあるんですが、そもそも総会としての意義や目的も伝わりづらいなと感じました。
そこで総会の運営に手を挙げて、そのキックオフをやる前に、総会に対して思う指摘やアドバイスとかをバーっと書いて送りました。
いま思うと、僕がされたらかなり気に障るぐらい(笑)。

諸戸さん

めっちゃ酷評されているなと思いましたね(笑)。でも本当に、言っていることは全部正しいし、自分でもかゆいとわかっていたところでした。
変えたいなと思っていたところを見事に指摘して、提案までもってきてくれたので、心を打たれました。

黒木さん

それを総会の運営メンバーの前で発表させてもらって、そこから自分もジョインしたんです。それが入社3ヶ月後で、その次の総会からきちんと運営をするようになりました。
グループブランド戦略室を立ち上げてクリエイティブ統括になったのは、その約1年後の2018年10月ですね。

諸戸さん

戦略室を立ち上げる前から、クルーズ株式会社のPRの一環としては、グループブランディングに取り組んでいました。
しかし、2018年の5月に全ての事業を子会社化して、グループ経営に舵を切ることを公式に発表した後から、「グループをどうしていきたいんですか?」「どんなイメージにしたいんですか?」なんてことを社内外からよく聞かれるように。
最初はグループの各子会社で独自文化をつくっていってくれれば良いと思っていました。ただ、やはり今後のグループ経営や採用を考えたときに、やっぱり全体としての見え方は大切だとも考えていました。

それがきっかけで、クルーズのPRの延長ではなく、子会社を横断してグループブランディングをやるための箱(部署)をつくりましょうと提案しました。
さらにその上で、グループブランディングとデザインをセットでやらなければいけないと。
公式の箱をつくってグループを強化していきましょうという話は、黒木さんからも前職の経験を聞いていたので、統括への就任は僕からお願いしました。

黒木さん

戦略室がちゃんとできあがるってタイミングで、僕に依頼をいただきましたね。

諸戸さん

黒木さんは、何でも手を挙げてやるっていう話もそうだけど、毎回バンバン提案してくれるんですよ。そういう人がトップに立つべきだと思って、黒木さんにお願いしたんです。
僕はすぐに「デザイン戦略室をつくって、統括は黒木さんにお願いしたい」と社長に提案しました。

グループブランド確立のため、まずは社内から固める

ーーグループブランド戦略室では、具体的にどのようなことをおこなっているんですか?

黒木さん

いまは総会と社内報がメインですね。以前の総会は動画があるくらいだったんですが、個人的には現場で雰囲気を盛り上げる動画のようなものと、ハードウェアとして手元に残るものが大切だと思っていて。だから、総会で配る冊子をつくりました。
例えば、総会が終わって冊子をオフィスにポイッとおいておく。1ヶ月後くらいにふと「何だっけこれ?」と思ってパラパラっとみるんですよ。時間を越えて情報がまた届く。そういうツールがあったら良いなと思って。

直近では「STANDING OVATION」をテーマにした総会に合うようにポスターもつくって、総会の前月くらいからオフィスの壁や柱にポスターをぶわーっと貼り、もうすぐ総会だという雰囲気づくりもおこないました。

▲グループ総会のポスター

黒木さん

事前にこういうポスターで温度をあげて、どういうコンテンツをやるかチャットで発信しつつ、当日も表彰や動画で盛り上がって、後日は冊子で振り返る。そういう総会全体の設計を、デザインしているんです。
さらにいまでは3ヶ月に1回、総会の受賞者インタビューなどをまとめた冊子や新聞をつくっています。グループの各子会社が何をやっているとか、社内の共通認識をつくる目的ですね。

▲社内報や総会の冊子、ステッカーなど

諸戸さん

デザインに関しては社長や他のメンバーからもかなり信頼されていますね。
昔からデザインについて凄くこだわりのある社長ですが、直近の総会では完全に我々に任せてもらえています。黒木さんへの信頼感はとても大きいですね。

黒木さん

そうなんですか、初めて聞きました(笑)。

諸戸さん

子会社の社長たちからも、総会について「めちゃめちゃ良い総会だったね」「次も期待しています」っていう声があがってくるようになってきました。
本社や子会社の代表も役員も、最初から全員がグループブランディングに積極的だったわけではありません。あったらあったで良いよねくらい。
でも、僕らが本気で活動して、変わっていく段階を見ているので、徐々に「こういうのも重要なんだな」という雰囲気が醸成できている気がします。

▲グループ総会の様子

黒木さん

総会に力を入れているというのも、いまは足元のインナーブランディングが重要だと思っているからなんですよ。一気に子会社が増えたので、会社間の連結がまだまだ弱い。
そんな中でいきなりプロダクトに統括として関わっても、横のつながりがしっかりしていないと「誰だよお前!」となってしまいかねません。
定期的な総会やタブロイドの発行などを通して、グループにどんな人がいるかを知り、「あの人にこんなこと相談したいんだけど」というのがグループ内で回るようになったらひとまず成功だと思っています。

社名ではなく、プロダクトでつながるブランドへ育てたい

ーーでは今後、グループブランド戦略室を通して、クルーズグループをどう成長させていこうとお考えですか?

黒木さん

グループの事業やサービスが、裏側でひとつの軸足に置かれているという状態にしたいですね。
例えば、多くのグループ企業では、母体となる会社を入り口にして、その後ろに子会社が様々な形で存在している形です。子会社の社名には、必ず母体の会社の社名がついていたりしますよね。
でも現在は、プロダクトベースにブランディングしなければいけない時代になっていると感じています。だからあえてクルーズという名前を出す必要はありません。

プロダクトをひとつずつクオリティの高いものにして、広く使われるサービスが4〜5つくらいになってくる。そして「ショップリスト良いよね」「トラベリスト使いやすいよね」と、どのサービスも使いやすく、ロゴもかっこいいなと思ってもらう。
そしてそれが全てクルーズだとわかったら、「クルーズってなんかすごい会社だ!」って。
その一線を越えた瞬間に、会社としてもサービスとしても広がりやすくなる。
そこまでもっていけたら、デザインとしては勝利かなと思います。

諸戸さん

求めているのはまさにそこですね。クルーズグループでは、基本的に事業もビジョンも文化も全部バラバラで良いという方針です。
ただ、バラバラなんだけど、裏側で共通のブランディングができている状態をつくりたいなと思っています。
自分が使うサービスがクルーズグループだとわかったとき、「あっ、あの会社のグループ会社なのね!」とつながるように。

黒木さん

そうすればグループとしてのシナジーで開発ができ、採用もうまくいきますよね。
いまはもしかすると、こういう形でグループ経営をやっている会社はないかもしれません。だからこれがうまくいけば、今後の時代に適合した形でブランドがつくれるのかなと思っています。

諸戸さん

もうひとつは、そうやってグループとしての意識を高めていくことで、バラバラで良いと言いながらも「うちのグループでよかったな」と社員に思ってもらいたいです。
サービスのロゴも、総会も、社内報もかっこいい。周りからも、クルーズって良いねと言われる。その全体を通して、グループにいることが誉だと感じてもらえると良いなと思います。ブランド戦略室に入りたいっていうメンバーがバンバン増えてくると最高ですね。
黒木さんには統括として、総会や社内報などのツールを使いながら、そういうグループブランドをつくってもらいたいなと期待しています。

<取材・執筆・撮影:シンドウサクラ>