SPEEDAFORCASINITIAL――経済情報や企業情報を起点としたさまざまなB2B SaaSプロダクトを開発・提供する株式会社ユーザベース。同社B2B SaaS事業のデザイン部門を統括しているのがCDOの平野友規さんです。

平野さんは二社での会社勤務を経て、20代でデザイン会社を立ち上げて独立。その後、大学院への進学や海外での研究活動を経て、ユーザベースのCDOに就任しました。

数々のキャリアの節目でなにが平野さんを突き動かし、そして、どのような“転機”を経て「いま」があるのか。

今回は、平野さんが1on1コーチを務めるD.TOKYOの新クラス実際のプロダクトで学ぶB2B UIデザイン」の開講を記念し、ロングインタビューを実施。<キャリア編>の当記事では、平野さんのこれまでのキャリアパスや象徴的な出来事を振り返りながら、「デザイナーのキャリア形成」のヒントを探ります。
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株式会社ユーザベース
B2B SaaS事業 執行役員 CDO
Chief Design Officer
平野 友規さんTwitter
トランスコスモス、コンセントを経て、2011年にトライアンド(現 デスケル)を設立。 2019年にユーザベースのSPEEDA事業に参画。主な仕事は、SPEEDAのデザインマネジメント、三菱重工業の社会インフラ事業のDX推進に向けたビジョン策定支援、RICOH THETAの新規事業開発時におけるUX / UIデザイン。株式会社デスケル 組織デザイン顧問。株式会社UB Ventures クリエイティブパートナー。
株式会社ビビビット
デザイナー特化型転職エージェントViViVi​T BOOST
キャリアアドバイザー
金井 謙太インタビュアー


20代で独立、30代で研究活動、CDOまでのキャリアパス

――まずは、平野さんのこれまでのキャリアパスを大まかに教えてください。

多摩美術大学を卒業して、IT業務支援サービスを提供しているトランスコスモスに新卒で入りました。そこで何年か働いて、デザイナーの先輩から「YOU来ちゃいなよ」みたいな軽いノリで誘われて(笑)、デザイン会社のコンセントに転職しました。

その後、大学時代の同級生に声をかけてもらって、トライアンド現 デスケルというデザイン会社を立ち上げました。20代で独立して、めちゃくちゃ仕事に没頭しましたね。その反動からか、30代になって学び直しをしたいと思うようになりました。

それから、東京藝術大学大学院の修士課程に進学したり、35歳の節目にDesign School Koldingというデンマークのデザインスクールに留学したりしました。そこでは、大学院の客員研究員として、ソーシャルデザインにまつわるデザイン研究をしていました。そのあたりのエピソードはnoteにまとめているので、よかったら読んでみてください。

デンマークからの帰国5日前に、いま働いているユーザベースからLinkedIn経由でメッセージをいただいて、そして現在に至ります。改めて振り返ると、本当に人の縁で生きてこれたキャリアだなと思います。

――すごくわかります。転職エージェントをやっていますが、僕もずっと人の縁で転職しています(笑)。

僕はエージェント経由で転職したことはないですが、インターン生からすると、僕自身がエージェントみたいな役割なのかもしれません。

就活に向けた特訓プログラムを結構やっているんですよ。企業ごとに求められるデザイナーの違い、志望動機の書き方、面接官に伝えるべきこと等々。

そもそも僕が、普段から面接する立場にありますし、業界歴もそこそこ長いので、伝えられるアドバイスはいろいろあるかなと思います。キャリアの第一歩ですから、インターン生がいきたい企業に受かるためのサポートは惜しみません。もちろんお金は一切発生していないですよ(笑)。

――直球の質問になるんですが、仮に平野さんがいま転職するなら、エージェントを使いたいですか?

使いたいですね、リップサービスじゃなくて本当に。

業界歴が長いといっても、自分の正確な市場価値って意外とわからないんですよ。エージェントの方は転職市場の最新情報をたくさん持っているので、キャリアステージを一段高めたいときはやっぱり心強いです。

デザイナーはリファラルで転職する人も多いですが、デザイン業界の市場性を客観的に知るためにも、エージェントサービスを利用するのはアリだと思います。


もしいま若手なら、僕は「◯◯」をする!

――20代の方とのキャリア面談で、「どんなキャリアを築けばいいのかわからず不安」という相談をよくいただきます。平野さんがいま20代だったら、どういう会社にいきたいですか?

いま20代だったら、スタートアップにいきたいですね。経験を積めるスピードが段違いに早いですし、新しいビジネスをやるぞ! っていうエネルギーもあって、僕の性格なら日々ワクワクできると思います。

あと、20代はスタートアップと相性がいいと思っていて、若いほうが流行や時代性をキャッチアップしやすいんですよ。歳を重ねるほど、価値観や嗜好って固定化しやすいですから。かなり意識して情報を取りにいかないと、最新に追い付けなくなるんです。

なので、スタートアップは、20代のときの成長意欲や柔軟性がより活きやすい環境だと思います。

――それでは、ある程度社会人経験を積んだ、いま30歳前後ならどうしますか?

100%絶対、海外に行きます。デンマークのDesign School Koldingに35歳で留学しましたが、もっと早く行けばよかった……って、すごく後悔したんですよ。

例えば、当時の授業で「レゴをZ世代の女性に、どうすれば再び興味を持ってもらえるか?」という課題に取り組みました。よくある解決策として、SNSを駆使しようとなったんですが、そのとき、学生間の前提知識がズレていることに気付きました。

Design School Koldingの授業風景。

欧米圏の人だとWhatsApp、Snapchat、Instagram。中華圏の人だとWeChat。「え? LINEってなに?」という感じで、SNSと聞いて思い浮かべるものがまるで違う。また、宗教や地域性によって、同じツールでも利用ルールがかなり違うんです。

そのときやっと、「自分の当たり前は、当たり前ではない」ということが理解できました。世の中には、自分と異なる価値観を持つ人が山ほどいる。それにもっと早く気付けていれば、いまとはまた違った、面白いキャリアの選択肢があったかもしれないと思うんです。

30歳前後は、ある程度社会人経験を積んで、自分の芯は持っているけれど、まだ価値観が凝り固まっていない時期です。いままで国際交流の経験がなかった人は、特にその年齢で留学するのをすごくオススメします。

――では、40歳手前のいま、この先の未来はなにか考えていますか?

たぶん、モノづくり専業にはならないです。次のステップでは、コーチングや組織開発の方面にいくと思います。

例えば、UB Venturesという、グループ会社のベンチャーキャピタルがあるんですが、そこで投資先のデザイン組織立ち上げに伴走したいです。ユーザベース以外なら、コーチングサービスの会社に転職するとかですね。

これは、デザインを捨てるということではなく、コーチングや組織開発にデザインの力を掛け合わせるということに興味があるんですよ。もっと大きな夢だと、ビジネス英語を本気で学んで、外資系の組織コンサルティングファームでその分野をごりごり開拓する、ということもやってみたいです。


ロールモデル喪失。独立数年目で陥ったキャリア迷子、立ち直った“転機”とは

――最近本格的にコーチングを学ばれたそうですね。偏見かもしれないんですが、コーチングに興味を持たれるデザイナーはあまり多くない印象です。

確かに少ないかもしれないですね。僕はマネジメントをより良くする目的で学びました。もちろんデザイナーであっても、コーチングは受けたほうがいいと思います。

転職活動のときであれば尚更です。人生の大切な節目なので、「自分はなにをしたいのかをしっかり見定めないといけないですよね。

自己認識が不十分な状態で仮に転職できても、大体ミスマッチになりますから。どこにいくかよりも、まずは自分を知ることです。コーチングはその手助けになります。

僕の場合、価値観のレベルまでユーザベースにフィットしていて、独立時代の感覚とほぼ変わらずに働けているんですよ。CDOである自分のミッションや目標に対して、とても納得できているのも大きいですね。

――一方で、平野さんがこれまで仕事をされてきて、あれは失敗だったなと思う出来事はありますか?

独立して数年目に、師匠やメンターにあたる存在がいなくなったことですね。

独立したての頃は、経理とか財務とか、デザイン以外にやることいっぱいあるじゃん! って感じで必死でした。わからないことや課題があれば、領域問わずどんどん学びました。

ただ、それを数年続けたら、必要なことは大体拾いきっちゃったんです。そのとき、次に誰から学べばいいのかわからなくなりました。大きな閉塞感に包まれて、急に成長が止まりましたね。

「自分は本当にデザイナーをやりたかったのか……?」と元も子もないことまで考えました。いわゆる、キャリア迷子になってしまったんです。

――その苦しい状況から、どのように立ち直ったんでしょうか?

立ち直りのきっかけは、東京藝術大学大学院に進学して、恩師である大学時代の先生からもう一度教わったことです。

その方と再び出会って、デザイナーとして次になにを学びたいのか、身につけたいのか、進みたい未来が見えたんですよ。師匠やメンターが、自分の限界を引き上げてくれるんだと心から思いました。

僕はたぶん驕っていたんでしょうね。独立して、大きな仕事もいただいて、自分の腕ならもう十分やっていけると思ってしまった。そして、ロールモデルを自ら見失ったんです。

壁にぶつかってもがいた、その経験は無駄ではないです。ただ、師匠やメンターが身近にいれば、もっと早く進みたい未来が見えたんだろうなと思います。


学ぶ心さえあれば、万物すべてこれ我が師である

――ユーザベースでは執行役員 CDOというポジションですが、社内に師匠やメンターにあたる人はいますか?

代表取締役Co-CEOの稲垣さん、佐久間さんはもちろんですし、職種や役職に関係なく、ユーザベースで一緒に働くみんなから毎日多くのことを学んでいます

一緒にいるだけで、本当にたくさんのことを吸収できるんですよ。ユーザベースのSlackには、下手なビジネス書よりも有益なことがゴロゴロ転がってますから。優秀な方々が周りにいるだけで、僕の固定観念をぶち壊してくれるんですよね。

あと、有料のコーチングサービスも利用していて、その存在も大きいです。「平野さんにとってコミュニケーションってなんですか?」「デザインの価値ってなんですか?」みたいな抽象度の高い問いを、真正面から遠慮なくぶつけてくれて。そのおかげで、都度自分を知ることができています。

若いときにがむしゃらに働いたり、いろんな知識を身につけたり、その努力は全く無駄ではないです。ただ、問いを立ててくれる師匠やメンターさえいれば、いまの自分になにが足りないのか、どういう道に進みたいのかを、いち早く気付けると思います。

――最後に、平野さんはどんな方と一緒に働きたいですか?

デザイナーであれば、デザイナーという仕事が大好きな人。あと、「自由と責任」「権利と義務についてしっかり考えている人ですね。

これはあくまで、ユーザベースで働くならという場合ですが、責任や義務を全うしないまま自由や権利を得ようとする人は、組織にフィットするのは難しいです。

どちらか一方に偏ってはいけなくて、これはバランス感覚の問題なんだと思います。たくさん活躍している人ほど、このバランス感覚が優れている印象です。

ユーザベースは、そんなデザイナーを大募集しています。デザイン組織を立ち上げたばかりなので、みんなで組織を育てていくことに興味がある方は、まずはカジュアル面談からお話しましょう! ……と、最後は告知で締めたいと思います(笑)。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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