テレビ業界や広告業界、Web業界など、華やかに見える一方で「ブラック企業」があふれていることは有名です。そして残念ながら、デザイナーの多くはそういった業界に関わる仕事をしています。
しかし近年、急速にブラック企業の労働環境が問題視されるようになってから、各業界で「ワークライフバランス」を整えようとする動きが活発化しています。
そこで今回は改めてワークライフバランスに注目すると共に、海外企業が採用している労働方針をご紹介します。

ブラック企業とわかる5つのポイント

主に肉体労働のことを指して言われていた「きつい・汚い・危険」の「3K」。これをもじって、Web/IT関連では「きつい・帰れない・給料が安い」の「新3K」と呼ばれる言葉も生まれ、長時間労働や残業がデフォルト化しています。
Web/IT業界に就職することの多いデザイナーは、その点を理解しつつも「自分は大丈夫」「やりたい仕事だから」と飛び込み、新3Kと格闘しながら働くのです。
しかし、次第にそれに加えて、ブラック企業の定説となっている以下の5点に苦しみ、多くのデザイナーが業界からの離脱や転職・退職を余儀なくされています。

①精神論を語る人が多い

「死ぬ気でやっても死なない」「やる気がないからできないんだ」「みんな頑張っているからお前もやれ」などの言葉は精神論の代表例。パワハラ・モラハラに繋がり、サービス残業や休日出勤の原因の1つとも言われています。

②給料換算されない時間がある

デザイナーの働き方で問題となっているのは、仕事を自宅に持ち帰ったり、深夜残業を行ったりした場合の労働時間が給料に換算されないという点。
「仕事が遅い」「学ばせてもらっているから当然だ」などと言われ、残業代を出さない・申請しにくいシステムの常習化は、明らかにブラック企業と言えます。

③サービス出勤が横行している

通常、企業は労働者に週1日または4週に4日以上の休日を与えることが義務付けられています。休日がそれ以下だった場合違法となりますが、見かけ上は休みでも、実態は家で仕事をしているということは多くあります。

④代休・有給休暇が取れない

休日出勤をしても、代休を取ると仕事が終わらないため取れない。同様に、休むと仕事が終わらないため有休を取得できないという環境が問題として挙げられます。前述のように、有休でも家で仕事をしているということもあります。

⑤人の入れ替わりが激しい

①〜④のことが常態化すると、もちろん多くの人は定着しません。人が辞めると人手が足りなくなり、残っている人の負担が増えてさらに人が辞める……という悪循環も発生。
さらに経営層や上司がその原因を「やる気がない」と精神論に走ってしまうと、いつまでも変わらないという状況が生まれます。

【まとめ】ブラック企業の特徴

  • 精神論を語る人が多い
  • 給料換算されない時間がある
  • サービス出勤が横行している
  • 代休・有給休暇が取れない
  • 人の入れ替わりが激しい

なぜ、デザイナー/クリエイターは働き方が問題になりがちなのか

デザインの手間を知らない依頼主

そもそも、なぜデザイナーはブラックな働き方をしてしまうことが多いのでしょうか。1番の原因は、企業間の競争によりどんどんタイトになる納期や、クライアントからの無理な変更や修正の注文があげられます。
必死で期限までに納品を行ったとしても、要望が二転三転し、時にはデザインを1から作り直すよう命じられることまであるのです。
その原因はそもそも、デザイナーではない人が、ひとつの制作物を仕上げるためにどれほどの手間と時間がかかっているかを理解していないこと。
そのため、サービス残業やサービス出勤が常態化。もちろん給与に加算されないため、長時間働いても賃金は変わりません。このようなことから「仕事に対する対価が見合わない分野」となり、ブラックな職種になってしまったのです。

デザイナー間の師弟関係

このサービス残業やサービス出勤を余儀なくされるもう1つの理由に、デザイナー間の「師弟関係」が挙げられます。新人デザイナーは、尊敬できるデザイナーの元でスキルを学びたいという思いで会社を選ぶのですが、そこには厳しい上下関係が待ち受けていることも。
師匠による弟子へのパワハラやモラハラ、理由のわからないデザイン変更や、いつまでもOKのもらえない仕事……。「学ばせてもらっている」と思い込むと、休日出勤や残業にも逆らえない、やらざるを得ない状況が生み出されてしまうのです。

一方、ホワイト企業の基準とは?

社員思いの労働環境を整えているホワイト企業。ホワイト企業と呼ばれるポイントには、ブラック企業が見習うべき点が分かりやすく示されています。

①残業手当が出る

ブラック企業では、「固定給与の中に含まれているので、それ以上残業しても割増賃金は出さない」というみなし残業制度の悪用が横行していますが、ホワイト企業の場合はその問題もなし。
就業後に会社に残る必要がないように、勤務時間内に勉強会や研修を終えるよう徹底している企業もあります。

②福利厚生の充実

各種保険制度はもちろん、仮眠制度やジム手当、マッサージサービスなど企業独自の福利厚生を設けている企業もあります。近年は「カフェテリアプラン」といって、従業員が福利厚生メニューの中から、好きなものを選べる制度を導入する企業も増えています。いずれにせよ、社員の働きやすさを第一に考えている企業こそホワイト企業と言えるでしょう。

③休暇をとりやすい

有休・代休を獲得することを強く推進している企業もあり、申請するまで上司に「出さないとだめだよ」と追及されることもあります。ただ有休消化を促すだけではなく、「休暇をとるのは普通」という環境づくりも重要です。

④育休・産休制度の充実

ライフイベントにも柔軟に対応できるよう、在宅勤務や時短勤務などの制度を整える企業も増えてきました。在宅勤務はデザイン業界でも注目されていますが、一歩間違えれば24時間労働と変わらなくなってしまうので、制度を設ける場合は注意してください。

【まとめ】ホワイト企業の特徴

  • 残業手当が出る
  • 福利厚生の充実
  • 休暇をとりやすい
  • 育休・産休制度の充実

さまざまな働き方と制度

ワークライフバランスを整えるために、さまざまな制度を活用したり、新たな制度を設けたりする動きも出ています。

①裁量労働制とみなし残業制の違い

裁量労働制と、みなし残業の正しい違いをご存知ですか?この2つは、混同されがちですが全く別のものです。

裁量労働制は実際の労働時間にかかわらず、1日に一定の時間を労働したものとみなす制度で、適用できる職種が決まっています
出社や退勤時刻にも縛りはなく、残業をしても加算されません。しかしこの制度を取り入れていながら、出社時刻が決まっていて全く自由に働けなかったり、本来適用されない職種に用いられたりしていることもあります。
裁量労働制こそがサービス残業を常習化しているのではという指摘もされているのです。

一方でみなし残業(固定残業制度)は、給与にあらかじめ一定時間分の残業代が含まれている制度です。企業側は毎月残業代を計算する手間が減り、社員は毎月入ってくる給与に大きな変動がないことがメリットです。
例えば月に20時間の残業代が含まれている場合、残業時間が20時間に満たない場合も給与を減らしたり、翌月に繰り越したりすることはできません。また20時間以上の残業をした場合は、月単位で追加の残業代が支払われます。
しかしこの制度もまた不正が横行し、残業時間が超過しても残業代を支払わない企業は多くあります。

どちらの制度を適用していても社員を過剰に労働させている場合、行政指導が入ったり訴えられたりして、追加分の残業代を支払わなければならなくなることがあります。
もちろん正しく適用すれば、お互いにメリットのある制度です。きちんと制度を理解して、活用するようにしましょう。

②フレックスタイム制をベースに在宅勤務を活用

ワークライフバランスを強化している会社の中で近年主流なのがフレックスタイム制です。コアタイム(出勤義務時間)に会社にいれば、いつ出退社してもいいというこの制度。自分の時間を自由にコントロールできるメリットがありますが、その分自己管理能力の高さが求められます。
1ヶ月(清算期間)の最低労働時間が定められており、それを満たしていれば、1日ごとの勤務時間は自由に決められます。またフレックスタイム制を採用している企業の中には、週に1回リモートワークデイにすることで、在宅勤務を促す企業もあります。

目指すは、ワークライフインテグレーションの導入!

徐々にプライベートと仕事の両立が推進されはじめている日本ですが、既に海外ではワークライフバランスを超えて、仕事とプライベートを連動させるワークライフインテグレーションにシフトしつつあります。
例えば、会社での労働時間を減らしても、帰宅後や休日に仕事をしているという人が多いアメリカ
2017年のGallup社による調査で明らかになったこの事実を受け、仕事とプライベートを完全に切り離すこと自体が困難だと気づいたアメリカ企業は、ワークスタイルや勤務時間などにフォーカスする働き方を変えることにしました。以下のように個人個人がリラックスできる環境下で仕事に取り組んでもらうようにしたのです。

・顧客のために長時間会社に残るのではなく、早めに帰宅して自宅で対応する
・ペットを会社に連れてきて、面倒を見ながら仕事をする
・昼食は外出するのではなく、スタッフみんなで社内で作る

また上記のほかに、無限有休制度を設けている企業もあります。業務に支障がない限り、いつでも有休を取得できる夢のようなこの制度。
たとえ休暇中でも、PCやスマートフォンなどのデバイスを使用できる環境があれば、業務における緊急対応も問題ないという観点から設けられました。

社員にとって快適な働き方を第一に考え、柔軟に労働環境を整えていくアメリカ。日本でも社員の働き方にしっかりと目を向けることが、今後ますます重要になってきます。自社の課題にしっかりと向き合い、社員のために最適な労働環境を整えましょう。

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