企業に提出する履歴書は、応募者をPRする重要な書類のひとつ。企業の採用担当者は、取得資格や職務経歴、趣味、特技などが書かれた履歴書を見て、「求めている人材かどうか」を判断しているのです。
クリエイターにとって、履歴書と同じくらい大切なのがポートフォリオ。ポートフォリオとは、これまでの実績をまとめた「作品集」のことです。
クリエイティブ系の職種の選考では「ポートフォリオ審査」を行うケースが多くあります。採用担当者は求職者のポートフォリオを見て、デザインテイストやセンスといった総合的なスキルのほか、人物像や人間性を読み取る必要があります。
しかしクリエイターを採用する担当者のなかには、ポートフォリオ審査をおこなう際に「ポートフォリオの何を見るべきなのか?」「そもそも何を判断基準にするべきなのか?」など、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、クリエイターを採用する際のポートフォリオ審査において、採用担当者がおさえておくべきポイントをご紹介します。
そもそもポートフォリオとは
ポートフォリオとは、クリエイターがこれまで制作した作品をまとめたものです。求職者が自分の実績を証明するものとして使用したり、フリーランスのクリエイターが営業活動のための資料に用いたり、デザイン会社が会社案内の補完資料として作成したりと、さまざまな使い方があります。
- デザインスキルと作品のクオリティ
- 個性やセンス、デザインへのこだわり
- 制作に対する熱意や、制作へのスタンス
採用担当者が把握しておきたいポートフォリオのスタイル
(1)スタイル事例1「制作物少なめ + 説明多め」
このスタイルは制作物の数が少なめで、テキストや口頭での説明が厚めというパターン。制作を行う上での能力だけでなく、自分の作品を情報整理しながらロジカルに説明できるクリエイターに多く見られる傾向があります。
制作物の数が少ないと、「あまり実績がないのかな?」と思ってしまうかもしれません。しかしセンスが光る「渾身の一作」があったり、ロジカルな思考力があったり、読み取れることはさまざまです。気になった点は面接で質問してみることで、ポートフォリオだけではわからない応募者のスキルを判断できます。
(2)スタイル事例2「制作物が多め + 説明少なめ」
(1)とは異なり、これまで手がけた作品数が多く口頭での説明が少ないパターンです。
応募者はこれまで自分が制作した作品をできるだけ多く紹介し、実績を評価してもらいたいと考えているかもしれません。さまざまなジャンルや異なるテイストの作品を多くアピールしている場合もあるでしょう。
さまざまな観点でポートフォリオを見る
提出されたポートフォリオの捉え方は、採用担当者によってそれぞれ違うと思います。どのような観点でみればいいか迷った際には、以下のように考えると良いでしょう。
経歴などの情報として捉える
- 応募者のこれまでのプロジェクト経験
- そこでどんな役割やポジションだったのか
- どんなスキルを持っているのか
- 入社後に即戦力として働ける実務経験があるのかどうか
といった情報を判断しましょう。
ポートフォリオをひとつの作品として捉える
ポートフォリオから読み取れるのは、応募者が携わったプロジェクトの情報だけではありません。ポートフォリオをひとつの作品と捉えると、その完成度も重要な判断材料となります。ポートフォリオのクオリティで応募者の力量を見極めるのもひとつの手でしょう。
コミュニケーションのきっかけとして捉える
ポートフォリオは、「これまでどんな作品を手がけてきたのか」「今まで一番印象に残ったプロジェクト」「得意な分野は何か」など応募者とのコミュニケーションを深めるきっかけにもなります。面接前によく読み込んで、気になる点や聞いておきたいポイントを用意しておくと良いでしょう。
ポートフォリオでわかる6つのこと
1.作品の完成度
ポートフォリオ審査をおこなう上でもっとも重要なポイントとなるのは、作品の完成度。クリエイターがこれまで手がけた作品のクオリティを見ることで、自社で活躍できるスキルがあるかどうかを判断する基準となるのです。
ここで気をつけるべきなのは、評価すべき点は作品のクオリティの高さだけではないということ。入社してから活躍できるかどうかを判断するには、自社のイメージや仕事内容に合った作品をつくれているかを確認する必要があります。
例えば……
- 女の子のイラストをたくさん描ける人材を求めている
- 戦闘シーンで必要な背景や武器、怪物や戦士と幅広く描ける人材を求めている
- イラストは描けなくてもグラフィックデザインのソフトが使える人材を求めている
このように制作物や作風、スキルなど、企業が求める要因も違ってきます。まずはどのようなスキルや作風を求めているかを定め、そこに見合うかどうかを含めてクオリティの高さを評価しましょう。
2.成長度
次に重要になってくるのが、成長度です。新卒採用をする場合「即戦力」よりも「将来性」や「期待度」を重視する場合が多いかと思います。デザイナーを志望する学生も、応募の段階で完璧な作品を持っている人は多くはありません。そのため、ポートフォリオ審査の段階で成長度を見極めていくことが必要です。
デザイナーとして活躍できる人材を発掘するために、ポートフォリオ審査では以下のポイントを把握しておきましょう。
・基本に忠実
・過去の作品から成長を感じる
・新しいものを積極的に取り入れている
・オリジナリティがある
3.志望度
求職者のなかには、複数の企業の面接にまったく同じポートフォリオを提出しているひともいます。反対に、応募する企業に合わせてポートフォリオをカスタマイズしている場合は、志望度が高いことが読み取れるとも言えるでしょう。
例えば以下のような点から、ポートフォリオがカスタマイズされているかを見分けることができます。
- Webデザイナー職ならWebデザインを中心とした作品構成など、志望する職種に合わせられているか
- 志望する企業のトーン&マナーに合わせた作品はあるか
このようにして、応募者が会社について研究しているか、志望度が高いかを見極めていきましょう。
4.情報整理力
ポートフォリオは前述の通り作品集のことですが、作品を1冊にまとめる際にはさまざまな情報をわかりやすく整理する力が必要です。多くの作品をどのようにまとめるか、ひとつの作品に対して制作時間やスキルなどの情報をどのように盛り込むか。うまく整理して全体としては見やすく、さらに自らをアピールできていれば、情報整理力は高いと言えるでしょう。
・ポートフォリオ全体に一貫性のあるテーマを設け、それぞれの作品がまとめられているか
・各ページのテンプレートが見やすいように統一されているか
・レイアウトやフォントに規則があるか
・作品についてのスキル情報や制作時間などの記載がされているか
5.論理的思考力
情報整理力だけでなく、作品についてロジカルに考えて説明できるスキルも必要です。「なぜそこにボタンを置いたのか」「なぜ背景を○○にしたのか」などひとつひとつのデザインに意味があり、さらにそれをわかりやすく解説しているかどうかを確認しましょう。
デザイナーとして仕事をするには、クライアントや社内からの課題や要望を、どのようなロジックで制作に反映したか説明する必要があるからです。
- その作品のターゲットやコンセプトは明確になっているか?
- 設定した課題を解決できているか?
このような観点で見て、作品の制作意図や背景がしっかり説明されているポートフォリオは論理的思考力があると判断できます。
6.UIスキル
読み手(ユーザー)に配慮したポートフォリオを作成できているかという観点から、UIスキルがあるかどうか、ひいては人間性を垣間見ることもできます。
一見スキルも実績も申し分ないように見えて、「説明文のフォントがバラバラ」「製本の仕方が雑」など、見る人への配慮が欠けた姿勢は仕事にも現れてきます。近年は「UI」という観点がデザインにおいて重要になっており、これはスキルのひとつとも言えます。以下のような点を確認して、ユーザーへの配慮があるかをチェックしましょう。
・色や文字の大きさ
・トーン&マナー(トンマナ)
・レイアウト
・ポートフォリオのサイズ
・製本方法
4.さいごに
いかがでしたか? ポートフォリオからはスキルはもちろん、その人が「何をしてきたのか」「何をしているのか」「何をしたいのか」、そして人間性までも読み取ることができます。今回の記事を参考に、ポートフォリオは「どこに注目して、何を判断するべきなのか」を考えて審査に臨みましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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