2018年9月に行われた「SANRIO EXPO 2018」。これは年に2回、株式会社サンリオがお取引先や報道関係者などの招待者限定で開催しているB to B向けの展示会です。そのため一般にはあまり知られていませんが、展示会は限定公開とは思えないほど大規模で豪華。キャラクタービジネス界を圧倒的なクリエイティブ力で牽引しているサンリオが、なぜそのようなイベントを開催しているのか。その展示会にかけるこだわりや想いは?「SANRIO EXPO 2018」のクリエイティブ全般を担当されたおふたりに、お話を伺いました!

Profile

小松ちひろ
<株式会社サンリオ キャラクタークリエイション室 チーフクリエイター>
「シナモロール」「ぐでたま」「SHOW BY ROCK!!」そして「アグレッシブ烈子」などをデザインだけではなく、トータルでクリエイティブしている部署のクリエイター。キャラクターの開発、ブランディングを行っている。

政友規子
<株式会社サンリオ マーケティング本部 ブランドエクスペリエンス統括部 店舗体験デザイン課 チーフクリエイター>
4月の組織変更で、物販事業本部 店舗設計課からマーケティング本部へ。プロトタイプの店舗作りや、展示会の施工などを担当している。

コンセプトは「ようこそ!SANRIO KAWAII プラネットへ」

シンドウ
「キャラクタークリエイション室」と「マーケティング本部」と部署の異なるおふたりですが、今回の「SANRIO EXPO 2018」ではそれぞれどのようなことをされていたんでしょうか。
小松さん
キービジュアルやグラフィックに関する部分は私、展示会場の造作については政友さんの担当で、全体のコンセプトは一緒に考えました。
シンドウ
今回のコンセプトは「ようこそ!SANRIO KAWAII プラネットへ」とのことですが、これはどのようにして決定されたんですか?
政友さん
今回は、上から「ギャラクシー」をテーマにしたいと話がありました。
小松さん
前回の展示会のテーマが、変化するサンリオを感じていただきたいというものだったのですが、今回は一歩進んで「進化」をお見せしたいということでした。
政友さん
メルヘンな世界の「かわいい」から、「かっこいい」部分をお見せするものにしたい。「クール」や「宇宙感」をキーワードに、企業理念の「Small Gift Big Smile」の精神を伝えたいということでした。
小松さん
そこで「ギャラクシー」を表現するためのストーリーを組み立てていって「ようこそ!SANRIO KAWAII プラネットへ」というコンセプトが生まれました。
シンドウ
どんなストーリーですか?
小松さん
「いちごの王さま」が最初にハローキティ惑星をつくったことから、かわいいキャラクターの星が次々に増えていき、やがて、カワイイ惑星という世界ができあがったというストーリーです。
政友さん
ストーリーに沿って会場は5つのゾーンに分かれていて、まずは宇宙船に乗り込むところから始まります。
「いちごの王さま」とは
平和で美しい、いちご王国の王さま。誰にでも親切で優しい性格。いつも、平和や友情のことを考えていて、なかよく暮らせるようにと願って、みんなにメッセージを送っている。

SANRIO KAWAII プラネット5つのゾーン

会場はメインホールを中心に、特定テーマ別、事業部門別、そして、一般のお客様もご覧いただけるアトリウムで構成しました。

1.宇宙船内の部屋

エントランスからメインホールまで、キャラクターごとのブースとトピックスを展示したエリアです。宇宙船内にはキャラクターたちの部屋があり、テーマは「宇宙に持って行きたいものを散りばめた部屋」。ブースには窓と扉があり、ぬいぐるみには浮遊感をもたせました。ぬいぐるみは素材やサイズを統一することで、全体の雰囲気にまとまりを出しています。一方で、窓や扉には細かい指定をせず、各キャラクターのクリエイターが自由に表現できるようにしました。

宇宙船に乗り込むと「シナモロール」や「まるもふびより」など、キャラクターたちのブースが並んでいる

2.メインホール内にも5つのテーマが

時空を超える牛乳瓶のトンネルを通ってメインホールへ

①ハローキティ惑星
来年45周年を迎えるハローキティの展示エリアです。お客様それぞれの「First Kitty」を探していただこうとハローキティの歴代商品を展示しました。また、8月からスタートしたハローキティ公式YouTubeチャンネルのコーナー展示も行いました。

②スマイルギフト惑星:シーズンによって色を変える星

サンリオショップ向けの商品(ギフト)や店舗での展開例を展示しました。壁面機能を店舗に合わせて造り、実際に出来る具体的な提案の場に。3連モニター、ストッカーのシート貼り、フォトスポットのシーズン装飾を提案しました。

③フレンドシップ惑星:たくさんのキャラクターが集まる賑やかな惑星

サンリオの持つたくさんのキャラクターの魅力や、さまざまなターゲット・販路へ向けた事例を部門別に紹介したエリアです。

④ミルキーウェイ
ライセンシー各社様との取り組み事例の紹介エリアです。

⑤ドリームスターズ:これから惑星になる星の卵たち
アニメ・ゲームグッズ専門店「サンリオアニメストア」や、「SHOW BY ROCK!!」「アグレッシブ烈子」「サンリオ男子」など、新マーケットやアニメ・ゲーム関連事業のエリアです。

3.KAWAIIプラネットステージ

プロジェクションマッピングを取り入れたサンリオピューロランドのライブショーや、お客様参加型のライブキャラクターショー、サンリオ男子の人気声優が登場するミニステージなどを開催したイベントスペースです。
今回は、小麦粉の妖精なのに「おにぎりになりたい」という夢を持つ“かわいそかわいい”、はかない存在のキャラクター「こぎみゅん」のライブキャラクターを初お披露目しました。

こぎみゅん
コギムーナ(小麦粉の精)のおんなのこ。
本当はおにぎりになりたいと思っているけれど、おにぎりがどんなものかは分かっていない。

4.事業部門別の展示ルーム

メインホールを出ると、広告・販促・空間演出などあらゆるサービスを通じて活躍するキャラクターの役割について紹介したエリアに。そして、階段をあがるとライセンス商品を展示するエリアに続きます。

5.一般の方も見ることのできるゲートシティ大崎アトリウム

今回は、サンリオプロデュースコーナーを大きく設置したほか、ハロウィーン衣装のマイメロディが1日3回グリーティングを行いました。

統一感と個性をもたせる、こだわりのクリエイティブ

小松さん
実は、ストーリーを組み立てて展示会を開催したのは、今回が初めてだったんです。以前までは、それぞれの部署が完全に役割分担をしていたので、キービジュアルと会場の雰囲気がバラバラということもありました。全体を統一するということは、クリエイティブにおいてとても大切なことだし、お客さんにも企画展をみているような気持ちで見ていただきたかった。そこで今回はコンセプトをきちんと定めて、ストーリーで見せられるようにしたいと思っていました。
シンドウ
企画段階から、「進化を見せる」という試みがなされていたんですね。クリエイティブ面で特にこだわったのは、どういうところですか?
小松さん
5つのゾーンそれぞれで、個性を出すところですね。いくらコンセプトに基づいたストーリーを表現しても、ただ同じようなトーンで流れていくとお客さんも飽きてしまうと思います。そこで、コーナーごとに変化を感じるつくりにしました。
政友さん
色々なところにリサーチにでかけ、空間構成のヒントとなるようなものを探しました。ふたりでリサーチに行くことでつくりたい方向を共有でき、イメージづくりもスムーズにすすめることができました。
小松さん
最終的にはキービジュアルや空間演出はもちろん、招待状やお土産もトータルで、統一感のある世界観をめざしました。

招待状

シンドウ
お伺いすればするほどこだわりが深い「SANRIO EXPO 2018」ですが、消費者向けでない、企業向けのイベントにここまで力を入れているのは何故なんでしょうか?
小松さん
やっぱり、サンリオの文化を知ってもらいたいと思うからです。ファンシーショップはいろいろありますが、他の企業にはない特色が、サンリオにはあります。キャラクターの中には、一度流行したらいなくなってしまうものもありますよね。でも、サンリオはキャラクターを大切に育てています。そういうキャラクター育成のポリシーのようなものも、伝えていきたいです。
政友さん
展示会は重要な営業の機会でもありますが、それ以上に文化を知っていただき、今後に期待感を持っていただけたらなと思っています。

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