自由を求めて会社を設立した
「この海で一番自由な奴が海賊王だ」
漫画『ONE PIECE』の主人公であり、私の理想のリーダー像でもある、モンキー・D・ルフィの言い放つこのセリフがとても気に入っています。
ちなみに「自由」という言葉を辞書で調べてみると「他のものから拘束・支配を受けないで、自己自身の本性に従うことをいう」とありますが、このセリフをルフィが語るからこそ、「自由」という言葉には「自己自身の本性に従いながら夢の実現のためにあらゆる選択肢を実行すること」であり、そのための「覚悟と責任を自分が持つ」というニュアンスも含まれるように感じたのを覚えています。
皆さんの会社のクリエイターはどのくらい自由に働いていますか?
もしかすると、「会社員なんだから自由なんてあるワケないだろ」「漫画を喩えに子どもみたいな話をするな」といったご意見もあるかもしれませんが、「目的のためにあらゆる可能性を探り、その手段を選択する」「そして、その責任を全て自分が持つ」という自由の言葉の側面から考えると、実は働くということが自由そのものに他ならない、とも言えるのではないでしょうか。
今の世界の変化はとても速く、市場における競争はますます激しくなっています。ピンチとチャンスが拡大する中で、良い時代になったと思う人もいれば昔は良かったと嘆く人もいるでしょう。でも少なくとも言えるのは、価値観が多様化し、様々な選択肢が増えていくことで、どう働くかは、どんどん「自由」になっていく、ということです。
だからこそ私は、誰よりも「自由なクリエイター」でありたいという想いが強まっていき、2018年4月2日、「自分の声で語るとき、人はいい声で話す」を信念に掲げた会社、サインコサインを設立しました。
決して簡単ではないのは重々承知ですが、もっと自由なクリエイティブワーク、もっと自由なチーム編成、もっと自由な働き方、などを探求し続けています。まだまだ答えが出ていないことのほうが多いですが、皆さんの会社におけるクリエイターの働き方のヒントに少しでもなればと思い、その実験の内容や可能性についてお伝えしていきたいと思います。
クリエイターの本当の価値は何か?
2006年にセプテーニに新卒入社して以来、広告クリエイティブに携わるキャリアを歩んできました。ダイレクトレスポンスを中心に、戦略PR、キャンペーン企画、テレビCM、ソーシャルメディアマーケティングなど様々な領域・タイプのお仕事にクリエイティブディレクターとして従事してきました。
その傍らで、2014年頃からはタイムチケットというスキルシェアサービスも通じて「30分の対面セッションによってネーミングやコピーを考える」というプライベートでの活動も行っています。
その活動から、「自分だけでなく依頼主も一緒になってアイディアを考え抜いて、ヘトヘトに疲れているときほど良いアウトプットに辿り着くことが多い」ということに気が付き、そこで私が提供している本当の価値はネーミングやコピーをつくり与えることではなく、良いアウトプットに共に辿り着くための場づくりをしていることにあるのだ、と思い直しました。
この感覚に気づいてからは、「ファシリテーション(集団による問題解決やアイディア創造を支援し、促進していく働き)」という切り口でのスキルアップやインプットも心がけるようになり、従来のクリエイティブディレクターの枠を超えた「共創のファシリテーター」としての価値提供も目指すようになっていきました。
クリエイターだけの力では課題解決できない
一方で、当時の本業である広告会社の仕事現場に目を向けてみると「共創」とは、ほど遠い現実に直面することが少なくありませんでした。
例えば競合コンペです。競合コンペは、もちろん最適なパートナーやプランニングを採択するために有効なやり方ではあるのですが、結果に関わらず、オリエンやプレゼンのために必要以上の時間を要したり、競合と差をつけるためのプランニングやプレゼン手法といった、本来の課題解決とはズレた部分にリソースが割かれたりしてしまうと、本末転倒な事態も起こりかねません。
また、本来は「共創」できていて当たり前なはずの社内プロジェクトにおいても、事業規模の拡大に伴って部門間で見ているゴールが異なったり、プロジェクトに対して自責を持ちにくくなってしまったり、メンバー各々が自分の意見や考えを出し合い難くなってしまう、というのは各社共通の悩みではないでしょうか。
すなわち社内外において、本来はクリエイターと力を合わせなければならないクライアントやパートナーと「共創」するどころか、お互いの顔色だけを伺い合うような状態になっているといっても過言ではないかもしれません。
そのような状態で、コモディティ化や価値観の多様化が進行し、複雑さと不確実性の高まる現代〜未来における各社の課題を解決できるでしょうか?この期に及んで「クリエイター」という役職の人だけに、クリエイティブな課題解決を押し付けてはいけません。
職種・役職や受発注の関係性に関わらず、全員が幸せになるゴールはひとつ
言うまでもありませんが、職種・役職や所属している部門、受発注の関係性などに関わらず、全員のゴールは同じです。例えばパフォーマンス型広告で考えてみると、「クライアントの求めるパフォーマンス指標をクリアするクリエイティブを多く制作・配信する」というゴールを実現すれば、広告主はもちろんハッピーになります。
そして、結果として広告予算の増加やプロジェクトの継続につながるため、広告会社側もハッピーになります。また、パートナーである広告メディアや制作プロダクション、および営業やクリエイティブといった職種も問わず、全員ハッピーを享受できます。
つまり、プロジェクトに関わる全員が共通のゴールを実現するために役割を担い「共創」し、成功したときは全員で喜び、失敗したときには全員で反省するというスタンスが、日々難しくなる事業課題やマーケティング課題を解決する上で重要だと考えています。
ちなみに私は、セプテーニ時代に「#全員クリエイター」というスローガンを掲げることで、クリエイティブ職だけでなく、メディア運用コンサルタントやアカウントプランナー(営業)などのスタッフも全員で、広告クリエイティブに対する意識を高めてきました。