働き方が自由になる時代のクリエイター進化論 Vol.1 はこちら

前回は締めくくりに、プロジェクトに関わる全員が共通のゴールを実現するために役割を担い「共創」し、成功したときは全員で喜び、失敗したときには全員で反省するというスタンスが、日々難しくなる事業課題やマーケティング課題を解決する上で重要だとお話ししました。
今回は、その「共創」をするためにはどうすれば良いのか?サインコサインではどのように活動しているのか?についてお話しします。

「共創」を推進するためのファシリテーション手法

Vol.1でお話ししたように「共創」が必要になる中で、私はワークショップを中心に、ファシリテーション(集団による問題解決やアイディア創造の支援・促進)型のソリューションを開発してきました。そのひとつがアイディア共創型ワークショップ「Cro-Session(クロセッション)」です。

「複数の異なる立場のプレイヤーが集まり発想する場」という意味を込めCrossroadとSessionの組み合わせから名付けました。
例えば、広告クリエイティブを発想したい場合、「WHO?(ターゲットは具体的にどんな人?)・WHAT?(その人に刺さる訴求/ポジショニングは?)・HOW?(どのようなクリエイティブ表現にする?)」という3つの問いに取り組みながら、複数の新しいクリエイティブをカタチにしていきます。

専門性が求められる表現を発想するパートでも、限られた人(クリエイター)だけがコミットするのではなく、Pinterestなどを活用して、アウトプットイメージを全体で共有し、職種や経験に関わらず「全員」が当事者として参加して「自分が創った」という意識を持ってもらうことを大切にしています。

そうすることで、斬新なアイディアを発想しやすくなるだけでなく、クリエイターの個性やこだわりを活かした新しい取り組みに対するチャレンジについても意思決定しやすくなるというメリットを感じています。

ブランドのアイデンティティを共に創り、共に浸透させる

それでは、このような手法を通じてサインコサインでは何をしているのか?一言で言うならば「企業・個人などを始めとした様々なブランドが、目指す未来へと前進し続ける」ためのお手伝いです。
技術革新がもたらすコモディティ化や、価値観の多様化にも伴って、企業や個人などあらゆるブランドの存在価値が問われており、様々なニーズが生まれています。

例えば、ネーミングや企業理念、コーポレート・ロゴといったブランド・アイデンティティの定義/再定義。それに関連する多様なクリエイティブ・アウトプットの制作。さらにそのアイデンティティを社内浸透・実践していくためのワークショップや研修なども含めた継続的なコンサルティング・サポート。また新規事業や社内イノベーション創出の支援、などなど。
真にブランドの望む未来を実現するために提供すべきバリューは多岐に渡りますが、後述する多様なチームメンバーならびに相応しいステークホルダーを当事者として巻き込みながらサポートしています。

このようにビジネス領域を限定しないことは困難も尽きませんが、そこに解くべき「問い」があるならば、会社の枠を超えて全員で取り組むことで、新たな手法(解き方)と仲間(解ける人)を増やしながら、より難しい「問い」にチャレンジしていきます。

企業と個人が対等になる

このようにクリエイターとの「つくりかた」やクリエイターが「つくるもの」が変わっていくとともに、クリエイターとしての「はたらきかた」も大きく変わっていきます。

私自身も前述のタイムチケットなどでのプライベートなクリエイター活動を行った結果として、個人としても大きな実績づくりやアワード受賞につながったり、テレビや新聞など各種メディアからの取材が増えるなど、当時の私が「クリエイターとして目指していたこと」がいくつか叶ってしまうという経験をしました。

もちろん会社での経験や実績もあってのことではありますが、個人としても、ここまでのことができてしまうのは大きな発見でした。これからは、どんなに優良な企業で働けていても、「個人」としての市場価値がなければ、面白い仕事や出世の機会は巡ってきづらくなります

一方で、そのような価値のある「個人」にとって魅力ある企業は、優秀な人材を採用し、事業成長につなげることができると思っています。つまり、いよいよ「企業と個人が対等な関係になる」というのが、その頃に自分の中で確信したことです。

副業3.0=自分を主語にやりたいことに情熱を注ぐ時代

そして最近では、働き方改革やパラレルワークといったワードを耳にしない日は、もはや少なくなってきました。主に副収入を得ることが目的の「副業1.0」時代から、本業とも相乗効果のあるスキルを磨きながら報酬を得る「副業2.0」時代へとシフトしつつあると言えるでしょう。

そして、サインコサインが見据えるのは、さらにその先の「副業3.0」時代です。ここまでくると副業という概念もなくなっているかもしれませんが、「副業3.0」とは所属する会社ではなく「自分自身」のビジョン・ミッションをベースに、様々な仕事や活動を組み合わせながら自己実現を目指す時代のことです。そして、それが確実にやってくると思っています。

これからは優秀なクリエイターほど「どこかの会社に軸足を置きつつも、新しいチャレンジを複数のチームやコミュニティあるいは個人でも行う」という働き方になっていくはずです。もはや、優秀であればあるほど自分の会社だけで囲い込むようなことは不可能になっていくでしょう。

サインコサインとしては、そのような思考のクリエイターの受け皿になりたいという気持ちを強く持っていますし、それが自身の事業を成長させるきっかけにもなると信じています。では、どのように働いているのか、いくつか具体例を紹介したいと思います。

会社の価値が問われる時代に会社の枠を超えたチームをつくる

サインコサインでは「SIGNCOSIGN TEAM COMMUNITY」という数十名規模のサロンを形成し、オンライングループやオフラインイベントでの情報共有や議論を日々行っています。

全員がサインコサインとは別の本業があるのですが、各々が自分自身のビジョン・ミッションを持っており、会社の中では意思決定が難しいチャレンジやスキルアップの機会を求めて参画してくれています。

例えば、Pinterestでコミュニティマネージャーを務めるメンバーには、不動産会社のコワーキングスペースでのコンテンツづくりに協力してもらうことを通じて、サービスの啓蒙に活かしてもらったり、マネーフォワードでマーケティングを担当するメンバーの「クラウド会計ソフトを潜在層にもカジュアルに訴求していきたいが、社内でのプロジェクト化が難しい」という悩みをきっかけに、WeWork Icebergを舞台に新しい働き方を啓蒙するイベントを共催したりしました。

また、それぞれの近況や課題感をカジュアルに報告できる場として、スナックイベントや餃子パーティーなども定期的に行っています。仕事の間隔が空いてしまっているパートナーと顔を合わせたり、新しいメンバー・パートナー候補と出会える機会になっています。

受発注の意思決定などにおいても、個人レベルでの関係性がますます重要になっているので、こういった場でそれぞれの人間性(humanity)を定期的に認識し合うことには非常に価値があると考えています。

また、面白い現象として、正式な雇用や契約関係にあるわけではない数名のコミュニティメンバーがFacebookプロフィールの職歴欄にサインコサインを追加してくれました。これを見た周囲からは「え?辞めたの?転職したの?」といったリアクションもあり、ちょっとザワつくのですが、このように会社という場を楽しんでくれるのはとても嬉しいですし、心強い覚悟の表明だと思っています。このようなメンバーがひとりでもふたりでも増えるようにチームを活性化させていきたいです。

行動する人が起点になり、共感する人が支援する

このようなコミュニティ型のチーム形成には、大きな可能性があると感じている一方で、従来の組織マネジメント以上の難しさも数多くあります。最近、注目されているティール組織において「変化は、それを必要と感じる人が起点となる」と言われているように、自発的に行動を起こす人がいないと何も始まりませんし、またその人に周囲の共感を得ながら巻き込み、推進していく力がなければ物事は前に進んでいきません。

それらを強制的にではなく、自然発生するような環境をつくらなければ持続的なコミュニティとしては機能しないわけですが、優秀なメンバーほど本業がとても忙しいので、もちろん簡単には事は運びません。また明確な報酬形態で契約を交わしているわけでもないため、そこまで行動に強制力はなく、実際のプロジェクト進行でもフレキシブルな対処をする覚悟がコアメンバーに求められます。

それでも、私をはじめとした少数の社員メンバーだけでは考えも及ばないようなアイディアの種が生まれたり、メンバー同士でのネットワーキングから新たなプロジェクトが派生したりする様子を見ていると、間違いなくチャレンジする価値のあるスタイルだと感じます。

では、何をすれば、どんなルールや制度をつくれば、どんなメンバーがいれば、絶えず新しいアイディアが生まれ事業成長にもつながるプロジェクトが進行していくのか。その方法論にはまだたどり着けていませんが、引き続き実験を続けながら、随時ご報告できればと思います。

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