クラウドソーシングの登場で、誰でも簡単にデザイン業務を発注することができる便利な時代になりました。筆者はフリーランスでグラフィックデザイナーをしていますが、注文の際に「デザインの注文自体が初めてでよく分からない」「まずは何をお伝えしたらいいですか?」という声をよく聞きます。

そこで今回は、「外部に制作を依頼した際に、どんな流れで仕事を進めたらいいかわからない!」という方向けに、発注してから納品されるまでの流れを詳しく解説します。筆者が依頼を受けることの多い<企業ロゴの制作>を例にとってご紹介しながら、どんな内容をグラフィックデザイナーに伝えればやり取りがスムーズになるかお伝えします。ぜひ参考にしてください。

企業ロゴを注文しよう

発注者:Aさん(自営業)
Aさんのプロフィール:新しい会社を設立したばかりで、会社ロゴが必要になったので依頼したい。グラフィックデザイナーに依頼するのははじめて。

Aさんのケースを仮定します。まずは、どこでロゴを注文するか決めましょう。ロゴの注文先はいくつかありますのでご紹介します。

【ロゴを作ってくれるところ】

・広告代理店/広告制作会社(予算相場:50~100万円)
・デザイン制作会社(予算相場:25~60万円)
・ロゴ専門の制作会社(予算相場:3~5万円)
・フリーランスのグラフィックデザイナー(予算相場:5~30万円)

ロゴの制作が注文できる代表的なところは、広告代理店/広告制作会社やデザイン制作会社ではないでしょうか。広告代理店/広告制作会社の予算相場は50~100万円とかなり幅がありますが、会社理念やロゴのコンセプトから一緒に考えてくれるのが特長です。デザイン制作会社は、広告代理店よりも予算相場は低い傾向にあります。ヒアリングした内容に基づき、会社理念などもデザインに反映してくれます。

また、ロゴを専門に取り扱っている制作会社もあります。ロゴ専門の制作会社は、制作日数も短く3~5万円と比較的安い価格でロゴを作ってくれます。ロゴの案を無料で提案するところもあり、サービス内容も会社によってさまざまです。個人事務所を経営しているフリーランスのグラフィックデザイナーも多く、実績や受賞歴によってロゴの価格は大きく変わります。日本を代表するような一流のグラフィックデザイナーのロゴは、高額になります。独立したてや、ある程度実績を積んだグラフィックデザイナーなら5~30万円が平均的な予算相場ではないでしょうか。

それぞれの会社や事務所のホームページには、過去の作品の実績を載せています。どんなイメージのデザインにしたいか、実績を参考によく検討しながら選びましょう。予算やスケジュールについては、直接問い合わせるのが一番です。

クラウドソーシング
ロゴの発注先には、若手からベテランまで幅広い層のグラフィックデザイナーが集まる、クラウドソーシングという手もあります。クラウドソーシングには、コンペで選ぶ方法とグラフィックデザイナーに直接依頼する方法があります。相場は1~5万円、とにかく安くて早いのが最大の特長です。人気の高いコンペでは100以上のデザイン案が集まることもあり、予算をかけられない個人や企業の間で人気が高まっています。

ロゴが納品されるまでの流れ

予算やロゴの雰囲気を確かめて発注先を決めたら、いよいよ注文です。ロゴが納品されるまでの流れを見ていきましょう。
今回Aさんが発注する先は、フリーランスのグラフィックデザイナーです。

【STEP1】打ち合わせを行う

初めての注文の際は、「今回初めてロゴを注文します」と伝えてみましょう。注文を受ける側は慣れているので、いつもより丁寧に手順を説明してくれるでしょう。その後グラフィックデザイナーとのやりとりで、どんなロゴにするかお互いのイメージを固めていきます。一概にはいえませんが、細かく打ち合わせを重ねれば重ねるほど、良いデザインができあがる傾向にあります。依頼した経緯や相談内容をなるべく詳しく伝えましょう。

 

打ち合わせではグラフィックデザイナーが詳しくヒアリングをしてくれますが、以下のような点を予め考えておくといいでしょう。

注文の際に伝えることは、以下のような内容です。

(1)ロゴ制作の目的(例:新会社設立や社名変更など)
ロゴを制作する目的は非常に重要です。企業ロゴはこれから先も会社の顔として使われていくものなので、グラフィックデザイナーとして一番知りたい内容になります。今回なぜロゴが必要なのか、どんなものに使いたいか(Webサイトやパンフレット、広報誌など)を細かく伝えましょう。

(2)社名や業種などの基本情報(例:不動産業、建築会社など)
グラフィックデザイナーは「どんな業種なのか?」という点もデザインの参考にしています。それぞれの業種に合う雰囲気や特徴があるからです。どんな会社なのか分かりやすいよう、WebサイトやブログのURLがあれば伝えましょう。設立したばかりの会社であれば、Webサイトなどは制作途中でも構いません。扱っている商品やサービスなどの写真があれば尚良いです。

(3)デザインのイメージ(例:中央にA、周りは円を描くなど)
ロゴに入れるデザインのイメージについて伝えます。頭に描いているイメージは、言葉だけではなかなか伝えにくいことがあります。「こんなデザインにしたい」という指示つきのイラストを書いてあげると、グラフィックデザイナーはイメージしやすいです。手描きで構わないので、簡単に紙に描いたものを見せましょう。

(4)希望の雰囲気(例:かっこいい、洗練されたなど)
ロゴの雰囲気も具体的に伝えます。例えば、“かっこいい雰囲気”といっても色々ありますよね。「高級感があってかっこいい」なのか「クールでかっこいい」なのか、それによって完成するロゴはまったく違います。いくつか当てはまるものを書き出してみましょう。ロゴのイメージがすぐに思いつかないときは、ほかの会社のロゴも参考にしてみるのも良いでしょう。

(5)希望のカラー(例:水色や赤など)
ロゴを作る上で、カラーは重要な要素です。水色のイメージが浮かんだとしても、実際には薄い水色から濃い水色まであります。そんなときは、DICカラーを使い細かく色の指定をしましょう。また、どんな色がロゴに合うかを尋ねてみるのも一つの方法ですね。

(6)希望のモチーフ(例:炎を入れてほしいなど)
希望するロゴのモチーフがあれば、こちらも伝えましょう。

(7)ロゴの納期
〇月〇日までに欲しい、という納期を伝えましょう。例えば「○月○日に新社名の発表があるので、それまでには必ず欲しい」と具体的な内容があるとそのぶんスケジュールを考慮してもらえます。逆に急いでいない場合は、「急ぎではありません」と伝えましょう。

【STEP2】ロゴの案を選ぶ

無事にやり取りが済んだら、グラフィックデザイナーがロゴをいくつか提案してきます。料金によって提案の数が増えるので、たくさん欲しいときは料金も上乗せになります。ロゴの案は、鉛筆描きのものかパソコンである程度形になったものが送られてきます。ロゴの案を比べながら、一番イメージに近いロゴを選びます。

【STEP3】完成したロゴを確認する

どの案が一番良いか選んだら、完成したロゴデザインのデータが送られてきます。ロゴのデザインやバランス、誤字脱字がないかをしっかりと確認しましょう。完成したロゴをプリントアウトして、色味の出方も確認すると良いでしょう。

【STEP4】修正や変更の依頼をする

ロゴを確認後に「文字の大きさを調整したい」や「色を変えてほしい」など、あとから意見が出てくるかもしれません。その場合、ロゴの修正や変更について依頼します。どんな点を直してほしいのかなるべく丁寧に伝えると、やり取りがスムーズにいきます。

【STEP5】再度確認する

依頼した内容通りに、グラフィックデザイナーが手直ししたロゴが送られてきます。再度、ロゴの修正や変更箇所を確認しましょう。

修正や変更は何回まで?
修正や変更については、回数によって料金がかかるケースがよく見られます。ロゴを専門に作るデザイン制作会社は「〇回まで無料・〇回目以降は別途料金がかかります」というルールのところがもあります。ロゴを大幅に作り変えたい場合は、変更ではなく作り直しの作業になるため、料金は変更よりも高額になります。そうならないよう、制作段階での確認をきちんと行い、「認識が違った」ということのないようにしておきましょう。

【STEP6】納品

デザインの修正と確認が完了したら、データが納品されます。納品は、メールでデータを送付したり、CD-Rを郵送したりする方法があります。納品されたロゴは、その後名刺やWebサイト、自社パンフレットに使用できます。同時にそれらも依頼しておくと、ロゴを使用した制作物がすぐに手に入りますね。

 

グラフィックデザイナーはどこに時間をかけているの?
多くのグラフィックデザイナーは、最初の打ち合わせ(ヒアリング)やアイデア出しに時間をかけています。ヒアリングをすることで、依頼相手が求めているものや、その制作によってどんな目的を達成したいかが引き出せるからです。

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