2014年に総務省がおこなった「事業所・企業統計調査」によると、デザイン業の事業所数は9,010箇所あり、デザイン業に従事しているデザイナーは男女合わせて40,563人という結果が出ています。さらに、デジタルコンテンツ、Webなどのオンラインプロダクツなどのデザイン業務に関わる人の割合は、わずか7.1%。

売り手市場で人材不足と言われている近年、採用が難しいのはデザイナー業界も同じです。そんな中、求める人材にマッチするデザイナーを採用したいと思っても、理想の人材を確保するのは難しいものです。

「一緒に働きたい!」と思えるデザイナーに確実に入社してもらうためには、どうすれば良いのでしょうか? 今回は、採用担当者が押さえておきたい選考フローとそのポイントをご紹介します。なかなか人が集まらないのは、もしかしたら選考フローに問題があるかもしれません。ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか?

丁寧な選考で応募者の心をつかむ

(1)応募ルートを厳選する

採用媒体は数多くありますが、ミスマッチが少ないとして近年話題なのはViViViT」や「Wantedly」のような「スカウト型」。ダイレクトリクルーティングの一種で、求職者からの応募を待つことはもちろん、気になった方に向けてスカウトを送ることが可能です。
相手の実績や経歴を見てからスカウトし、マッチしてからメッセージのやりとりを行えるため、面接までのスピードが早くなります。また、応募条件に満たない候補者の書類選考に無駄な時間をかけずに済みます。
さらに効率的にデザイナー採用を行うなら、「クリエイティブ特化型」がおすすめ。登録している求職者があらかじめ絞られていれば、採用活動もスムーズに進められます。

(2)求人情報の文面は単刀直入にわかりやすく書く

「何をやっている会社なのか」「どんなサービスを開発・提供しているのか」「企業理念やビジョン」といった会社の情報も重要なことではありますが、応募者が知りたい情報はそれだけではありません。
「自分のスキルや経験をその会社で活かせるかどうか」「自分が成し遂げたいビジョンは実現できるのかどうか」「給与は仕事内容に見合うかどうか」「残業時間の有無」といった、具体的に働く想像ができる情報を知りたいと考えているはずです。

そのため「入社したらこんなメリットがある」「こんな働き方が実現できる」とわかる情報を、きちんと書くことが大切です。また、募集タイトルにも読み手のインサイト(深層心理)に刺さる文言を入れると、一層効果的でしょう。

(3)書類選考

スカウト以外のルートで応募があった場合は、書類選考へと進みましょう。ここで重要となるのが、ポートフォリオの確認です。たとえ経験豊富なデザイナーであったとしても、「テイストと合わない」「得手不得手がある」というケースが発生してしまうことも。
必要最低限のスキルは大前提として、過去の実績を複数提出してもらうことを忘れないようにしましょう。

(4)面接

面接が決定したら、複数のデザイナーに同席してもらうことをオススメします。少数精鋭でプロジェクト管理をおこなっている企業では、ただ単にスキルが足りるだけではなく「一緒に楽しく働けるか」「カルチャーフィットするか」が重要になるからです。デザイナー全員が『この人と仕事をしたい』と思えた人だけに内定を出す、という企業もあります。
採用担当者の独断で採用を決めてしまうと「一緒に仕事がしづらい」「思ったよりも仕事ができない」など、さまざまなところで不満が出てしまう可能性があるので注意しましょう。

面接の際には採用側から、求人票では伝えきれなかった“うちの会社に入ったらこんなにいいことがある”というメリットを、応募者にアピールすることも大切です。さらに面接では企業から求職者だけではなく、求職者も面接官を見て判断しています。相手に質問ばかりして、企業からは事務的な内容だけを伝えるといったことのないように気をつけましょう。

入社後のミスマッチを防ぐ体験入社

面接はしたものの、お互いに候補者と実際に働くイメージがつきにくい場合は、体験入社を実施してみるのはいかがでしょうか。働く環境はどうか、同僚や上司とはうまくやれそうかなどを肌で感じることができます。少し手間がかかるようにも感じますが、カルチャーフィットを大切にする企業であれば、ミスマッチを防ぐことは重要です。さらに、面接では伝えきれないメリットを、候補者にわかってもらえるかもしれません。

(5)選考課題

経歴や面接で判断しきれない場合は、選考課題を課すこともできます。ただし、応募者にとってあまり負担のない回数と課題内容にしておきましょう。
中途採用で日中に仕事をしている場合、選考課題に時間を割くことができずに辞退することもあり得ます。優秀な人材を獲得するためには、選考内容をできるだけシンプルにすることも大切です。

(6)条件提示(役割/報酬)

双方が合意し無事に採用が決まったら、入社後の具体的なポジションや報酬などを一気に詰めてクロージングに入りましょう。応募者への評価と入社後の期待を伝え、それに伴った提示額がいくらになるのかを明確に伝えてください。
ただし、複数の企業から内定をもらっていた場合、他企業と候補者の取り合い(バッティング)が生じます。このバッティングに勝つためには、応募者の進捗状況を確認することが大切です。

選考進捗を知りたいときは、「ほかにも面接を受けられていると思いますが、気になっている会社はありますか?」とストレートに聞いてみると、応募者の本音を引き出せることもあります。
採用活動は応募者との心理戦です。相手が本当は何を考えているのか、何を求めているのか、決めかねている理由は何かなど、応募者の深層心理を探ることも重要です。

ターゲットを絞ることが採用活動を成功させる一番の近道

デザイナーに限ったことではなく、すべての採用活動を成功させる一番の近道は、自分たちが求めているターゲットの的を絞ること。応募者に「あ! 私が必要とされている!」と思ってもらうことで、企業への興味関心につながり応募フォームへのボタンを押してもらえるキッカケになるからです。

「Webデザインの実務経験が4年以上ある方を募集」

「『Photoshop』『Illustrator』でのデザイン経験とコーディングができる方(経験3年以上)を募集」

という具合に、より具体的な内容を伝えることがポイントとなります。

日程はできるだけ調整しよう

応募者の過去の経歴やスキル、ポートフォリオを見た段階で「この人と会ってみたい」「もっと詳しい話を聞いてみたい」と思える人がいたら、相手の希望日程に合わせて企業側の予定も可能な限り調整しましょう。

大切なのは「カスタマー(応募者)ファースト」です。募集している雇用形態によっても変わりますが、中途採用の場合は仕事をしながら転職活動をおこなっているという候補者の割合が8割近くにものぼります。

「土日は面接日程を組まない」「平日の面接は夕方の18:00まで」などと、企業によって選考ルールは決められているもの。しかし本当に優れた人材を確保するためには企業本位にならず、徹底的に応募者(カスタマー)に合わせた柔軟な選考を進めていくことも重要なのです。

まとめ

人材不足が叫ばれる近年、「攻めの採用」としてダイレクトリクルーティングが流行するなど、採用にも変化が現れています。デザイナー採用においても、選考フローや応募者への対応を丁寧に行い、欲しい人材を逃さない採用活動を意識してみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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