地方都市の中でも、住みやすい街として名高い福岡。
2015年にはITクリエイターの移住と転職を応援するプロジェクトを福岡市が立ち上げるなど、クリエイティブ人材へのアプローチも積極的に行っています。

そんな福岡で2000年に設立されて以来、九州のクリエイティブ企業の第一線で活躍してきた株式会社ディーゼロ。
福岡県を中心に、数々の有名企業や大学などのWeb制作を手がけています。

今回は、地方都市の福岡におけるクリエイティブ業界とクリエイターの採用について、採用のご責任者である日髙さんにお話をお伺いしました。

日髙 信生
株式会社ディーゼロ 取締役/Webデザイナー

ディーゼロの創業年に、第1号社員・第1号新卒として入社。現在はクリエイティブデザイン部の部長として第一線で制作業務に携わりながら、採用の責任者も兼任している。

スキルより伸びしろ。育てる採用

ー日髙さんは、デザイナーとしての業務もこなしながら、採用のご責任者もされているんですね。

そうなんです。専任の採用担当はおらず、私が責任者として取り仕切りながら、必要な際に協力者を募っています。

ー新卒採用、中途採用は毎年行っているんですか?

そうですね。新卒は毎年2〜3名、デザイナー職をメインに募集をしています。候補者の中に「プランナーに良さそう」「エンジニアに向いていそう」と思う方がいたら声をかけたりしています。
中途はここ数年増えてきており、2018年は7〜8名採用しました。事業の拡大など必要に応じた採用をしていますが、随時良い人がいればお会いするということを続けています。
育成環境や体制を少しずつ整えながら、アップデートを頑張っています。そうしていかないと、伸びしろある人材を見逃してしまうと感じますね。

ー採用には、どんな窓口を使われていますか?

新卒の採用サービスは、ViViViT以外に利用していません。基本的には専門学校や大学のキャリア担当の方と直接お会いしたり、説明会に出向いたりすることが多いですね。説明会に行くと、ViViViTでつながった学生がいて、直接お話しすることもあるんですよ。そういったコンタクトができることも利用しているポイントのひとつです。

ー説明会などでの採用活動が多いということは、やはり入社される方は福岡出身の方が多いのでしょうか。

そうですね、福岡がいちばん多いです。福岡以外でもほぼ九州からですね。九州以外からも問い合わせをいただいて、会社見学に来られる方もいらっしゃいますが、新卒入社実績をみると九州の方がほとんどです。中途採用ではUターンや移住のパターンが増えてきました。

ー首都圏と比べるとどうしても、人材のスキルのレベルに差があるんじゃないか…?なんてことを思ってしまうのですが、実感されることはありますか?

エリア関係なく優秀な方は優秀だと思います。ただ新卒に関しては活発に自分をアピールしたり積極的に質問したりする方は少ないように思います。実際に面接でお会いしたり、学校の方にご紹介いただいたりすると、優秀な方や面白い方だとわかるということが多いですね。
学校の先生に伺っても、学生が自分をアピールする方法など、就職に関する教育については課題を感じているようです。

ー新卒の方々のアピールがものたりない、というのは、昔と比べてということですか?

いえ、そこは昔から変わっていません。昔と変わったことでいうと、今は情報を収集する方法や働き方への考え方が変化しているので、そこに対する双方のズレは感じることがありますね。そのジェネレーションギャップに関しては、もはや飲みながら話したいです(笑)。

ーそうなんですね(笑)。「学生側が活発に動いていない」とお伺いした際、人材不足や、特にWeb業界における需要の高まりの中で、学生側が「頑張らなくても就職できる」というスタンスになってしまっているのでは…と思ったのですが、そうではないんですね?

人材不足によって、頑張らなくても内定がもらえる割合は高まっているかもしれませんが、それと行きたいところに行けているかは別ですよね。
Web業界での需要は増していますが、Web専門課程がある学校は増えておらず、逆に減ってきている印象です。Webは新しい技術がどんどん入ってきていて、学生が学校で勉強するにはとてもハードルが高いようなんです。
ただ、昔に比べて独学しやすくなってるのも事実です。面白い!とのめり込んでやる人なら、学校での授業はあまり関係無いかもしれません。
だから採用する際はその時点のスキルを全く当てにしていません。ちゃんとものを考えられる人かどうかと、今後の伸びしろを見て、社内で2〜3年かけて育てて行くことを前提にしています。
過去の新卒採用実績だと、Web科卒とグラフィック科卒の比率は半々くらいだと思います。今年入社する方の中には、アルバイト兼インターンから採用につながった学生もいますね。

現場を巻き込んで、生の声を正直に伝える

ーインターンからの採用は、双方にメリットが多いですよね。募集はどのように行っているんですか?

募集はインターンというより「アルバイトを募集しています」と各学校にお伝えして、興味を持ってくれる方がいれば面接をするという形です。5〜6年前からインターンをはじめて、常に3名くらいはいる状態ですね。そこから毎年1名くらいは採用しています。
やはりインターンから採用すると、こちらも相手のスキルや人柄をよくわかっていますし、相手も会社のカルチャーを理解しているので、マッチしやすい。できるならそれだけで採用していきたいくらいです(笑)。

ーインターンから採用につながると、学生にとってもメリットが大きいですよね。採用に関して、ViViViTと説明会、インターン以外には何か活動は行われていますか?

3年ほど前から、Webを含め様々なクリエイターを育てるデジタルハリウッド(STUDIO福岡)という学校で、ディーゼロ特別クラスの枠をいただいて授業をしています。6ヶ月間のカリキュラムで、ディーゼロの仕事の進め方や考え方、Web制作技術など、弊社の社員が交代で登壇しています。教えるということが、社員のスキルアップにも非常に役立っているんですよ。
その中で興味を持ってエントリーしてくれた方や、入社に至った社員もいますね。

ー学校で授業を持つなんて、なかなかできることではないですね!コーポレートブランディングや採用ブランディングにも貢献していそうですね。

そうだと嬉しいです。そういえば面接にいらっしゃる方にも、ご存知の方がいらっしゃいますね。

ー様々な方法で採用活動を行われている中で、総合職ではなく、クリエイター採用ならではの工夫はありますか?

はじめにお話しした通り、弊社には採用専任担当はいないんです。説明会の都度、バリバリ働いている若手などに協力をお願いしています。だからこそ、現場で活躍している人の声を伝えられるし、良いところも悪いところも含めた会社の実態をお話しできます。お互いにズレが起きないよう正直に伝えることは、意識しているところですね。

ー専任の人事の方だと、クリエイターに協力してもらうことが難しいという悩みを抱えているところもあります。日髙さんはご自身もデザイナーとして制作に携わっていらっしゃる分、協力してもらいやすいということはありますか?

そうですね。それはあると思います。
また、現場のクリエイターが採用に携わることで、説明会で「ポートフォリオを見てください」と急に言われた時も対応ができます。

ークリエイター採用においては、現場の協力が必須なんですね。

クリエイターだからって、いまは東京に行かなくてもいい

ークリエイターのために、工夫している環境づくりなどはありますか?

弊社はもともと経営者がふたりともクリエイターなので、クリエイターへの理解や環境整備には理解があると思います。ハード面の機材に関しても、「こういう新しいことにチャレンジしたい!」などの意見や、ビジネスに活用できると感じたものに関しては、惜しまず投資するようにしています。
また、デザインに関するカンファレンスが東京で多く開催されているので、要望があれば交通費・宿泊費を負担して参加してもらい、内容を社内に共有してもらいます。

ー交通費・宿泊費もですか!なかなか珍しいと思います。

カンファレンスに参加したくても、自費で東京に行くのは難しいですよね。でも積極的に学びたいと思ってくれるなら、成長に投資したい。社内にフィードバックをもらえることもありがたいですしね。

ーカンファレンスが東京で行われることが多いことなど、東京にいる方が最新知識が入って来やすいのかなと思うのですが、福岡を拠点にするこだわりは何かありますか?

地方にいるからといって、情報が入って来にくいということは感じないですね。
もちろん「東京に行って挑戦したい!」という野望があることは素晴らしいと思います。ただ、いまはどこにいても仕事ができる時代ですし、技術的な勉強もどこでもできます。不利な点はないですね。むしろ家賃も安いですし、暮らしやすいんです。
最近は残業なども含めて時間の制約が厳しくなっている中で、通勤も自転車で15分など、近場に住んでいる人も多いです。満員電車のストレスもないし、自分の時間も増える。
特に福岡は都会も田舎もすごく近くにありますし、クリエイターにとって思いついた時に色んなチャレンジができる場所だと思います。
東京は刺激を受けるには良いところですが、それはたまに行く程度でカバーできます。何に重きを置くかにもよりますが、クリエイターだからまず東京に行く、みたいなことは今はもうなくても良いんじゃないでしょうか。

ーバリバリ活躍されているクリエイターが、地方に移住する例も多くなって来ましたもんね。福岡では市役所の主導で、クリエイターの移住を応援するプロジェクトが行われているなど、クリエイティブ業界も盛り上がって来ていますよね。

どんどん盛り上がってほしいです!確かに色々と活発な動きがあるなと思います。福岡は街がぎゅっとコンパクトにかたまっているので、会社がある範囲も狭い。だから業界同士もつながりやすいんです。

時代に応じて変化していく

ー持続的に発展する会社であるために、働き方の改善など、行われている取り組みはありますか?

弊社は女性が多く、特にデザイナーは男女比が1:3くらい。去年と今年の新卒入社も全員女性です。
こちらの記事ではそういった中で積み上げてきた女性の働き方について紹介しています。
ライフスタイルの変化は男性も含め必ずあることですので、臨機応変に対応できる制度や仕組みづくりをして行きたいと考えています。2018年にはこれまでなかった総務部ができ、育休の取得などに関する細かい労務・法務についても対応できる体制を整備しました。

ー時代のニーズに応じて変化しているんですね。では最後に、採用に関して今後の展望はありますか?

福岡は韓国なども近く、これから外国人の採用も視野にいれなければなと思っています。現在はまだ実績はないですが、将来的にはアジアの優秀な方々も採用していきたいですね。

<取材・執筆・撮影:シンドウサクラ>