3月になり、いよいよ就活や採用の話題を聞く機会も多くなってきました。ビジネス部デザイン課を運営する株式会社ビビビットでは、このたび新しい試みとして、クリエイターの目線から就活や現在の仕事・会社の魅力などを学生に向けて伝えるクリエイティブカンファレンス「ボム」を開催しました!
このイベントは、いわゆる「合同企業説明会」ではありません。登壇クリエイターそれぞれが体験した就職活動やキャリアについての想いを、プレゼンやトークセッションを通して学生たちに届けます。

関東会場は1月12日(土)・13日(日)の2日間に渡って開催。様々な業界の有名企業からクリエイターが集まり、就活事情などについて話してくださいました!
12日(土)はTYOテクニカルランチ/TTR、ディー・エヌ・エー、コロプラ、Cygamesが参加。デジタル領域に強みを持つ企業のクリエイティブについての話題を中心に、充実したセッションが展開されました。
13日(日)にはSEESAW、たき工房、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、博報堂、コンセントのクリエイターが登壇。デザインを通してサービス開発や課題解決に向き合う仕事のやりがい、社会での価値について語られました。

この記事では、筆者が参加した13日(日)の内容をピックアップし、就活イベントを通して企業が学生クリエイターたちに伝えるべき、クリエイティブを仕事にする魅力や就職活動のヒントを考えていきます。

広告編:専門性をどう追求する?様々なチャレンジができる制作会社の魅力

いろんな領域に挑戦できるデザイン組織

村越陽平 株式会社SEESAW 代表取締役社長
クリエイティブディレクター/アートディレクター
博報堂でマス広告制作に11年従事したのち、2018年にSEESAWの代表取締役に就任。デザインを主軸として様々な新規事業開発やブランディングを行う。国内外の広告賞を多数受賞。

美大を卒業し大手広告会社へ就職。デザイナー→アートディレクター→クリエイティブディレクターとキャリアを積んだのち独立を選択された村越さん。トーク前半では制作実績の紹介も交え、SEESAWの「デザインの力でビジネスを生み、成長させる」スタイルについて解説されました。

村越さん

SEESAWは商品開発、サービス開発に特化した制作会社です。様々な企業や新規事業の開発部とタッグを組んで、デザインの力を起点として新しいビジネスを生み出しています。マーケティングやPRなどの様々なポジションからデザインを考える人が机を並べ、組織全体でデザインに向き合う環境をつくっています。実績の多くは、事業の開発から携わっていることも特徴です。

自身のキャリアは、美大を卒業して博報堂に入社し、そこで約11年間働きました。マス広告から新規事業の立ち上げまで様々な経験を積む過程で、複数の専門性を身につけられたことは自信になっていきました。その後、チームプレイでより機能するデザインを生み出すためにSEESAWの代表に就任しました。これだけ見ると順調なキャリアパスに見えますが、実際には挫折を繰り返して現在に至ります。うまくいかないときにどう行動するかを考えた先で他のクリエイターと同じ行動をとるのではなく、「自分にしか見つけられない穴場を掘る」を繰り返したことが「オリジナルな人材」として社会での価値を高めることにつながりました

クリエイターの職場には、協業や専門性の応用体験ができる「複数の専門性が身につく職場」と、短時間で専門性を高められる「単一の専門性を追求する職場」があると思います。長い目で見てどちらが自分にとって成長しやすいか見極めることも、企業選びのポイントですね。ちなみにSEESAWは前者に当てはまる会社です!

最後は自身の体験から感じたクリエイターとして働く上での企業選びのポイントも紹介。うまくいかないときをチャンスと捉え、柔軟な発想でオリジナリティを高めてきた一人のロールモデルとして、学生たちの心に響くトークでした。
これからクリエイティブ職を目指す学生に向けては、企業の形態や事業内容が未来のキャリアにどう結びつくのか、企業側からも意識して発信できると就活の参考になりやすい印象でした。

「デザインで社会に何ができるか?」を常に考える

藤井賢二 株式会社たき工房
クリエイティブディレクター/アートディレクター

多岐にわたる商品広告やファッション広告のアートディレクションを経験。企業のブランド戦略にも参画。社会貢献活動「TAKI Smile Design Labo」の中心メンバーとしても活動中。

華やかで大規模な制作に携わる一方、「依頼を受けて売れる仕組みをつくる」だけになりがちなデザイナーの立場に違和感を持ったという藤井さんは、企業発の活動にも率先して携わってきたとのこと。クリエイター自身が組織に働きかけられる環境を通し、デザインの価値観や社会での可能性を広げていく勢いが感じられます。

藤井さん

たき工房はグラフィック制作やパッケージ、ロゴデザインなど広告業界ならではの多様なジャンルのプロジェクトに携わります。クライアントワークだけでなく、企業発プロダクト「TAKI PRODUCTS」の開発やCSR活動など、多様な視点でデザインと向き合う動きも大切にしています。社会的な課題を見つめる中で「問題が山積みのところにデザインで何ができるのか?」を自分も企業も考える、そんな会社だと思います。

自分の就職活動やポートフォリオづくりをふりかえると、今でも反省点があります。「スキルやセンスを磨かなきゃ」「個性を出さなきゃ」と思うばかりで、「デザインの結果誰に何を伝えられたか?」をあまり考えられていませんでした。今の時代は情報がたくさんあるため、自分のやる気1つ(行動力)で環境やチャンスは大きく変えられる。企業や現場のクリエイターと個人の実績の距離感も縮まる中、「デザインを通じて誰に何を伝えたいのか?」を常に考えられるといいですね。

漠然とセンスを磨く過程で、自分が天才じゃないと気づいたなら、「誰かのために」から始めることも働く中では大切だと考えています。「誰かのために」とは、最近だと「より多くの人=社会全体に向けた考え方」がトレンドになっている肌感もありますね。時代の変化・スピードもどんどん急激化しているので、なんでも武器にして喰らいつける努力を心がけましょう。

クライアントワークのイメージが強い広告業界ですが、藤井さんのお話からは個人としても企業としても「デザインと社会の関わり」に対して様々な挑戦をしていることが伝わってきました。純粋にものづくりに打ち込む人だけでなく、クリエイティブの可能性を探求したい人にも響く内容です。

トークセッション

プレゼンの後は、モデレーターとして株式会社ビビビット代表取締役の小宮大地を迎え、3人でトークセッションを行いました。プレゼンの内容を踏まえながら、就活に関するキーワードをいくつかピックアップしてそれぞれの考えを伺いました。

小宮
就職活動の中で「企業の規模感」を考えたとき、大きな仕事ができる大企業に行くことが必ずしもいいことなのでしょうか?

藤井さん
大企業はたくさんの人が働いている分、その全員を養う必要があります。そのため「大きな仕事しかやらない」傾向はあるかもしれません。大規模なことに関わっていきたい場合には、会社も大きめの方がチャンスは多いといえるでしょう。
村越さん
小さい企業の場合は初めから多くのお金がかけられない新規事業に関わることができるケースもあります。クライアントと近い距離感で話し合える仕事が多いという特徴は、ある意味小規模会社のメリットかもしれません。

小宮
近年の就職活動について、採用側からはどんな印象を感じますか?

藤井さん
環境はすごく変化していると思います。オンラインで作品を見られるなんて私の時代にはないものでした。学生の意識としては「ものづくりやデザインの考え方が合えば会社の大きさは関係ない」と選択肢を増やしている人も多いと感じます。
村越さん
会社に足を運んで作品を見せに行ったアナログ時代からの変化はやはり感じますね。個人的には、就職に対してより慎重な判断ができるように、大・小それぞれの規模を見てもいいのかなと。

学生
企業課題やポートフォリオ制作の過程で教授やOBからのアドバイスをどのくらい受け止めたらよいのでしょうか?

村越さん
全て相手の意見に合わせなくてもいいと思います。自分の就活でもOB訪問でアドバイスをもらいましたが、自分の考えと照らし合わせて最終的には課題テーマがより伝わるものを選んでいました。
藤井さん
「受かるための作戦」としては相手の考えや意見を取り入れて、評価者の印象を良くすることもできると思います。ただ世代的な価値観の違いなどもあるので、アドバイスを鵜呑みにしすぎない意識は学生・企業のお互いに必要かもしれません。

UI・デジタルプロダクト編:デジタル領域デザイナーの就活事情と専門性

デザイナーって就活で何すればいいの?

竹原沙織 株式会社サイバーエージェント
UIデザイナー

2016年にデザイナー職として新卒入社し、現在はAbemaTVで番組のグラフィックデザインやプロモーションに従事。グラフィックからUIデザインまで幅広いクリエイティブを手がける。

このプログラムでは、UI・デジタルプロダクト領域で活躍するデザイナーが自身の就活や現在の仕事についてを語られました。竹原さんからは、働きながら感じる仕事や企業の魅力、就活エピソードに合わせた「企業選びの決め手」を中心にお話しいただきました!

竹原さん

私は2016年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。会社全体の文化として感じられる、クリエイターたちの「若手への優しさ」「チーム感」「成長スピード」に日々刺激を受けながらデザイナーとして様々な案件に携わっています。

就活の進め方としては、ES・SPIなどの段階を踏んだ試験のある企業より、ポートフォリオをベースにサクサクと面接が進むところを受けていました。ポートフォリオは「グラフィックスキル」「デザインの考え方」「ポートフォリオ自体のレイアウト」「自分ならではのこだわり」の4つが伝わるよう意識して制作し、半年ほどで完成。選考を受ける中で、サイバーエージェントのものづくりに集中できる環境や、若手からチャンスがあり成長できる社風に惹かれて入社を決めました

自己分析をしてみると「いろんな挑戦ができる環境」が向いていることが分かり、企業選びはそれに合う職場かを意識しました。会社の雰囲気を知って、性格と合う場所を選べたことが現在の仕事の満足度にもつながっていると思います。また、実際に企業を訪れそこで働く人や環境を知ることも、自分の就活にはすごく大事な要素でした。新卒で入れる会社は人生で一つしかありません!広い視野と柔軟な表現力をもって、最善の選択ができるよう頑張ってください。

ポートフォリオや面接対策をするだけでなく、選考フローや社風も見ながら計画的に選考を進めていたというのは、採用側にとっても参考になるポイントです。プレゼンの最後には、自身のmessengerアカウントやインターンシップ情報もアナウンス。実際に企業で働くクリエイターとしても、就職活動の先輩としても心強さが感じられる内容でした。

約10年、いろいろなところで デザイナーやってきて思ったこと

久田歩 株式会社ディー・エヌ・エー
大学卒業後、京都のWeb制作会社に新卒入社。その後上京して広告代理店系Web制作会社でUXデザイナーとして数多くのコーポレートサイトやアプリの設計・デザインを経験。2017年から現職。プロダクトデザイナーとしてアプリ企画、設計、デザインからその後の改善まで幅広く関わっている。

デザイナー歴10年。現在は3社目でサービスデザインなどに携わる久田さん。キャリアをふりかえり、デザイナーとしての仕事や立場の変化、社会におけるクリエイティブの役割に対する気づきをお話しいただきました。

久田さん

新卒で入社した会社から現在までを振り返ると、それぞれの会社で学んだことには特徴があります。1社目は企業規模は小さいながらも、密度の濃い経験が多くある会社でした。案件の上流工程から関わるデザインの奥深さと、社会人としての基礎はそこで学びました。少し規模の大きくなった2社目ではコンサルティング事業に携わり、仕事における説得力(コンペに勝つ提案やお金につながる信用の得かた)、大量の案件に向き合う忍耐力を磨きました。そして現在働いているディー・エヌ・エーは、企業の中にとても大きなデザイン組織があります。最近関わった新規事業では、アプリのUIデザインから事業全体のプロモーションといった、様々な部分のデザインにチームが連携して関わりました。この環境で日々感じるのは、事業会社らしい「物事を進めて行く力」と、「ブランディングを考える機会」の多さです。

いくつかの会社を経験する中で、広告とプロダクトではスピード感や分業の感覚など、デザイナーに求められる能力に違いがあることを体感しました。「良く見せる」を重視し広く表現を追求する制作会社と、周りを巻き込みながら「いろんな視点から見る」ことで成長する事業会社、自分にとってより良い環境を選べると成長の仕方も変わると思います。

昨年にジョン前田さんが発表された資料の言葉を借りると、「デジタル周りのノウハウや強さを理解して挑戦できる“コンピュテーショナルデザイン”」のスキルの需要は現場でも日々感じています。就活では企業や仕事の中にぜひその部分も見据えて、どんどん力をつけられる挑戦ができるといいですね。

長い目で見たキャリア像を知ることは、クリエイターを志す学生たちにとって、将来のイメージを掴むために重要です。そして働く環境が「デザイン組織」であるということは、企業のデザイナーとして働く上では注目できるポイント。
事業やサービスが未来でどんな形になり、その時デザイナーはビジネスにどう関わるのか?学生にただ問うだけでなく、組織全体でデザインの価値の共有や、ディスカッションをする機会があってもいいでしょう。

トークセッション

このトークセッションでは「UIデザイナー」と「就活」に関する内容がメインとなりました。応募や採用で気になる疑問、実際のデザイナーから見て注目しているポイントなど、就活を進める上で参考になるヒントが多く登場しています。

小宮
UIデザイナーに求められるスキルや要素は何だと思いますか?やはりコーディングができなければ厳しいのでしょうか?

久田さん
スキル面では「即戦力になるような幅広い領域をおさえていること」の方が大事だと思います。コーディングスキルがあるに越したことはないですが、「できなくてもわかろうとする姿勢」の方が大切です。実際にデザイナーがコーディングまで担当するかどうかは、企業の組織体制や規模感で変わる部分もあります。
竹原さん
私もコーディングスキルやプログラミング知識より「幅広い基礎的なスキル(グラフィック、レイアウト、タイポグラフィなど)」が重要だと思います。特に新卒は入社後の研修で覚えられる可能性もあるため、コーディングができないからといって応募をためらう必要はありません

小宮
インターンシップには参加した方がいいのでしょうか?お二人は就職活動時に参加はされていましたか?

竹原さん
私は短期のものにいくつか参加しました。最近はインターンから入社するパターンも多いので、チャンスがあれば長期で参加するのもおすすめです。会社によっては合宿形式の企画もあります。ぜひ、ポートフォリオを早めに用意して、積極的に応募してほしいです
久田さん
実務に参加して得られる経験や会社の情報はとても貴重なので、ぜひ参加してみることを勧めます。自分自身も関西から東京の会社に行くなど、積極的に参加していました。参加すること自体に価値があるので、遠方でもできるだけトライしてみてください

小宮
選考に向けて、ポートフォリオはどのようにつくり込んだらいいのでしょうか?

久田さん
作品のプロセスや制作に至った流れをきちんと説明できるようにしましょう。グループワーク作品の場合は、チームの中で自分がどんな役割だったかも明確にできるといいですね。
竹原さん
文字情報はあまりじっくり読めないので、作品より説明文が目立ってしまうと少し惜しいです。ページ数やボリュームは多すぎず少なすぎず「自分の作品をわかりやすく表現できる形」をつくることがポイントです。

学生
美大以外からデザイナーに就職するときの心構えは?

竹原さん
美大以外からデザイナーになった人はたくさんいるので、あまり気にしなくていいと思います。ポートフォリオより面接での対応力を見ている場合もあるので、自分らしさを伝えられるよう頑張ってください。
久田さん
僕自身美大出身ではありませんが、デザイナーとして就職しているので胸を張ってチャレンジして欲しいです。仕事でのデザインスキル自体は、会社に入ってからの方が上がります。同じ環境で働く仲間として、人間的な魅力も企業は見ています。

特別トークセッション:博報堂

「言葉とデザインで人を動かす」

この日3つ目のプログラムは、博報堂のクリエイターによる特別トークセッション「言葉とデザインで人を動かす」。クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター、デザイナーが、それぞれの仕事や制作への想いを語ります。

長谷部守彦 株式会社博報堂 グローバルMD推進局
エグゼクティブクリエイティブディレクター

1986年に博報堂入社後、コピーライター、CMプランナー、クリエイティブディレクターを経て現職へ。これまで国内およびグローバルで数多くのブランディング/広告キャンペーンを担当。複数の国際広告祭において審査員を経験。ショートフィルムや本編製作にも関わり、2014年に映画監督としてデビュー作を公開。
倉田潤一 株式会社博報堂
第3クリエイティブ局 アートディレクター

2003年博報堂入社。国内外の審査を経験し、本年度はD&ADブランディング部門で日本代表審査員。GR、CM、ブランディング、デジタル、CI、VI、空間、パッケージなど様々な領域で、海外・国内広告賞・デザイン賞で金賞ほか多数受賞。
今井容子 株式会社博報堂
第2クリエイティブ局 コピーライター

2010年 博報堂入社。様々なクライアントのブランディング/広告コミュニケーションを担当。商品開発、新規事業の立ち上げなどにも携わる。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、読売広告大賞、ヤングアドフェストファイナリストなど受賞。
平井美紗 株式会社博報堂
AC企画局 デザイナー

2014年博報堂入社。倉田潤一アートディレクターに師事。ZOKEI賞、東京芸術大学卒業制作展デザイン賞受賞。デザイナー、イラストレーターとして作品に関与し、D&ADなど国内・国外賞を受賞。

「まっすぐなメッセージを伝える下地」としてのデザイン:クリエイティブディレクター

長谷部さん
入社以来、ずっとクリエイティブ職として制作に従事してきました。この10年くらいはグローバル広告と呼ばれる「言葉を変えて、一つのメッセージを世界中に伝える」事業に携わっています。長年デザインに向き合う仕事をしてきて感じるのは、ビジュアルが持つ「説明や言葉がいらない、ソリューションとしての言語になり得る力」です。まっすぐなメッセージを伝える下地として、デザインの力はビジネスにも大きく関わっていると思います。

「誰にどんな声で読まれたらしっくりくるか?」を意識した言葉のクリエイティブ:コピーライター

今井さん
私はコピーライターとして、言葉のクリエイティブをメインに仕事をしています。コピーはプロモーションやセールスに関わるものだけではなく、企業の根底にある開発のヒントや理念を定義することもあります。アイディアを出すときは「誰にどんな声で読まれたらしっくりくるか?」を常に考えますね。デザイナーと一緒に仕事をしていると、言葉が持つ懐の深さをかたちにする役割として、やはりデザインやビジュアルが持つ役割の大きさを感じます。
長谷部さん
コピーライターとデザイナーは一緒に仕事をする機会も特に多い関係なので、お互いに重要性を感じる場面があるかと思います。ポスターであれば書体やレイアウト、CMであればコピーを介して伝えたい世界観など。「目に見える形」になったとき、言葉の真意を伝えられているものは心に響いてきます

実際に触れられるものの価値を高め、ビジュアル化していく達成感:アートディレクター・デザイナー

倉田さん
アートディレクターとして、プロモーション全般に関わるビジュアルや各種メディアのデザイン、ブランディングなど幅広い制作を担当しています。案件の内容は様々ですが、人それぞれが持つ感覚や体験、空気感など「実際に触れられるものの価値」をリファインする視点を心がけています。その地道なデザインと向き合った積み重ねが、世界的な広告アワードの受賞や、国際規模で企業のブランド評価につながった話を聞いたときは自信にもなりました。
平井さん
私は博報堂に入社後、トレーナー・トレーニー制度のもと、倉田さんと多くのデザイン制作に携わっています。日々デザインと向き合う中で、他にない価値観や概念をビジュアル化できた時には、やはり達成感や手応えを得られます。つくったものが世に出たときの反応を見ると、世界を明るくする、華やかにするというデザインの意味や価値を改めて実感しますね。
長谷部さん
コピーライターやデザイナーは、ビジネスの場や制作途中では理屈っぽい議論になることも多いです。それを踏まえた最終的な成果として「秒速で伝わるデザイン」をつくれているのを見ると、やはりレベルの高さを感じますね。

学生からの質問

セッション後半では、参加者からの質疑応答をもとにトークが展開されました。美術やデザインを学ぶ学生以外からの質問も多く、よりフラットな視点でデザインを仕事にする価値観を学べる時間となったのではないでしょうか。

学生
クリエイターとして、企画を考えるときに大切にしていることは何ですか?
倉田さん
人中心(ヒューマンセントラル)ですね。ユーザビリティや理工学的な設計の考えとは別に、気持ちやメンタル部分も大事にしたいと思って制作をしています。
学生
企画系の仕事を目指しているのですが、広告代理店に入るためには今後どのように行動するといいのでしょうか?
倉田さん
他の人には考えつかないことを考えられる人、諦めないことを大切にする人の多い業界です。無理だと思われることを実現するガッツと理論づくりを大事にしてください。課題には柔軟に向き合う姿勢も大切です。
平井さん
デザイナー目線では、問題の穴埋めではなく「どうすれば楽しくなるか?」という考え方で新しいアイディアをたくさん出せる力が必要だと思います。「できるようにする」「こうすればいいのではないか」を提案する力はデザインでも企画でも重要だと感じますね。
学生
デザインに行き詰まったときはどう対処していますか。発想を柔らかくするヒントはありますか?
平井さん
精神論になってしまうかもしれないのですが……基本的には気分転換を大事にしています。ちょっとした頭の切り替えですね。フィジカル面でのリラックスも大切です。
倉田さん
僕も、ちょっとした発想の転換というか、精神論で切り替えるときはあります。少し固く聞こえるかもしれませんが「デザインの概念=新しいことをつくる」というマインドセットも思い起こすようにしていますね。あとは、失敗と成功の中にある自分の「胆識」レベルを上げることでしょうか。それは「実践力」をともなった「知識」ということです。
今井さん
発想を柔らかくする方法について、私はコピーライターなので「100人に向けて100種類のコピーを書く」ということをします。同じ内容でも相手に合う言葉を100人分考えると、自然とバリエーションにつながってきます。人は「何を言ってるかわからない状態」が一番混乱するしストレスになるので、そうならない工夫も意識しています。
長谷部さん
基礎的な部分ですが、意識を変える工夫としての客観視はよくやっていますね。行き詰まって辛かったり厳しい指摘を受けたりした時には、無理しないで傷つくこともあっていい。回復を待つのも悪いことではないと思います。

学生
クリエイティブ職に限らず、学生のうちにやっておくといいことは何だと思いますか?
今井さん
「自分が大事にしている思考回路」と同じ考え方をするものを見つけて、それを観察すると意外な職種に結びつくことがあるのかなと思います。私はもともと「芸術作品をどんなかたちで人に届けたら伝えたいことが伝わるか?」というテーマで研究をしたり学芸員の勉強をしたりしましたが、現在は広告業界でコピーライターをしています。就職活動やキャリアを考えた際に、表面的なイメージは違っても、感覚的にはやっていることが同じだと気づいたことが今の仕事につながりました。
長谷部さん
OB訪問以外にもとにかくいろんな人に会ってみてください。人それぞれの考え方の違いを知るのは、何事にも生きてきますよ。

特別トークセッション:コンセント

「CONCENT特別トークセッション」

最後はコンセントが登場。企業全体のデザイン観の紹介・就活や採用に関わる内容に加え、UX、課題解決、コミュニケーションといった、社会的な領域とデザインの関わりについてお話しいただきました。

大岡旨成 株式会社コンセント
取締役/ディレクター

Web制作会社勤務を経て、2003年より株式会社コンセントに在籍。多くのコーポレートサイト、サービス・情報提供サイトの企画・設計・ディレクションおよびプロジェクトマネジメントを行う。人事及び営業を担当するほか、現在もディレクターとしてプロジェクトに携わる。
黒坂晋 株式会社コンセント
UXデザイナー/アートディレクター

業界、BtoB/BtoC 問わず、様々な事業開発・改善プロジェクトのディレクション・設計・デザインを経験。 現在は主に新規サービスの顧客体験設計から、そのデジタルプロダクトの設計、デザインに携わる。
佐野実生 株式会社コンセント
デザイナー/ディレクター

Webサイトや紙媒体のデザイン・ディレクション・編集・進行管理などを幅広く担当。 現在は企業広報誌や教科書のプロジェクトに携わりながら、Webアクセシビリティの観点を踏まえた「アクセシブルなコンテンツ」の デザインに取り組んでいる。
大村健太 株式会社コンセント
ディレクター

大学ではプロダクトデザインを専攻し、形ありきではない、より人に根ざしたデザインを学ぶ。 現在は新規事業開発や、業務系システムのUI設計、コーポレートサイト構築など、幅広い領域を担当している。

会社としてのデザイン観「伴走するデザイン」

大岡さん
コンセントは伴走するデザインを理念に様々な課題解決を実践するデザイン会社です。全員がデザインに携わり、クライアントのパートナーとして物事を成し遂げる意識を大切にしています。手がけている領域も幅広いため、採用でも「できること」だけでなく「できるようになること」への意識を評価しています。

デザイン会社として長い歴史を持つコンセント。編集デザインから始まりPRやマーケティング、ブランディングにおける組織コミュニケーション支援やクリエイティブ開発、事業・サービス開発支援、組織デザイン支援といった時代変化に合わせた実践の数々からは、企業が持つデザインの解像度の高さが伝わってきました。
続いては「サービスデザイン」と「コミュニケーションデザイン」についての紹介。

コトのデザイン:サービスデザイン・コミュニケーションデザイン

黒坂さん
サービスデザインとは、企業が提供するものすべてを「サービス」と捉えて、顧客の体験全体をよくするための全体のしくみをデザインすること。事例としてはデジタルプロダクトのUI・UX開発や、企業や自治体向けのデザイン思考導入に関する研修、ワークショップなどがあります。幅広いデザインの専門家と協業しながらビジネス全体の課題を解決していく、そんな領域です。
佐野さん
コミュニケーションデザインとは、あらゆるコミュニケーションの課題(偏見、馴染みのなさ、現実的な距離、固執した既存イメージなど)をメディアや手法にとらわれず、デザインの力で本質的に解決することです。この実践では、クライアントの「本当に伝えたいことを伝える」ために適切な形でアウトプットすることを常に意識していますね。日頃から紙媒体からWebサイトまで様々なメディアに触れていますが、「きちんと伝わるデザインはメディア問わず本質的に同じ」ということを忘れず向き合うことが大切な分野だと思います。

就活で感じたこと、考えたこと

最後はこの日の登壇者で最年少でもあった大村さんが、自身の就活をふりかえりながら企業選びのポイントについてお話しされました。

大村さん
就活ではずっと、ものづくりに関わりたい、デザインに関わりたい、という気持ちで企業選びをしていました。いくつかの選考を受ける中で、専門性を絞るよりも「様々なことをしたい」という軸が定まり、企業を探す中でコンセントに出会いました。様々なことに挑戦する気持ちは、働きだした現在でも大切にしています

トークセッション

トークセッションのパートでは、選考ポイントや「就活」に関する内容を交えつつデザイン会社で働く魅力を語っていただきました。

小宮
選考で「できること」だけでなく「できるようになること」を評価しているとのことでしたが、それはどのようなポイントで判断しているのでしょうか?
大岡さん
伝えようとする努力や熱量、工夫はすごく見ています。ポートフォリオ審査の時点で作風・スキル以外のその人らしいイメージが浮かぶと、どんな人なのか実際に会いたくなりますね。面接でも「何かを伝えようとする姿勢」は重視します。採用では「これまでの学びを次にどう生かすか?」を大事にし、現在専門的にデザインを学んでいるかはあまり気にしません。
小宮
コンセントさんの面白さや魅力について教えてください。

大村さん
いろいろなことができるというのは間違いなく魅力ですね。部署も様々で、好きだけど専門になりきっていない部分への挑戦が全て役に立つ環境だと思います。特技と好奇心をたくさん持っている人の多い会社なので、デザインの幅を広げられるのは面白いです。
黒坂さん
企業として「doをcanにするにはデザインを総動員しないといけない」という考えがあります。専門を極めるというよりは、今必要とされるデザインにマッチするスキルを発揮できるように全員が考え、協働しあっているのは魅力です。

学生
仕事の中でやりがいを感じる瞬間は?
佐野さん
クライアントと直接やり取りをするので、相手が喜んでいるところを間近で見られることは嬉しいですね。相手の依頼に応えるだけの関係ではなく「もっとこうしたい!」という気持ちに気づける距離感にやりがいを覚えます。

おわりに

業界・業種だけでなく、企業ごとにクリエイターの価値観は様々。人生で1度しかない新卒入社をミスマッチにしないためにも、企業と求職者がお互いに理解を深める工夫や、採用施策が大切だと感じるイベントでした。アンケートには「現場の人から直接企業や仕事の話を聞けて、志望する業界や職種への理解が深まった」「志望していた業界・業種のイメージと実際の仕事のギャップを知り、自分の目指す方向性との違いを知ることができた」といった回答も多く見られました。
従来的な合同説明会では紹介が難しい、クリエイターそれぞれのキャリアデザインや価値観の違いについても、トークセッションを通して学生たちに強く響いたと感じました。

今回のイベントは、関東会場・関西会場それぞれ2日間ずつ行われました。
登壇企業はそれぞれ、自社の魅力やクリエイターとしての働きがいもアピールでき、学生からの志望度も高まったようです。

ビビビットでは今後も様々なイベントを行っていきますので、ぜひチェックしてくださいね。