デザインの良し悪しを判断するための基礎知識・デザインリテラシー。近年は、ユーザーとの接点においてデザインは重要な要素だと考え、経営層にデザイナーを置く企業も増えています。
ただここで大切なのは、デザインリテラシーがデザイナーだけではなく、ノンデザイナーにも求められているという点。感覚的なものではなく、きちんと判断軸を持って「何が良いデザインか」をわからなくては、デザイナーとデザインの話をすることはできないということです。
そこで今回は、デザインリテラシーについてと、勉強に役立つおすすめの書籍をご紹介します。

「デザイン判断力」の基礎知識・デザインリテラシー

企業がサービスや製品の開発を行う際は、コミュニケーション手段やプロダクトが「ユーザーのためになるかどうか」を客観的に判断する必要があります。
そして、その際重要になってくるのが、感性的判断・文化的判断・機能的判断・社会的判断の観点から客観的に分析をすることです。
これを、「デザイン判断力」といい、その良し悪しを見極める際の基礎知識となるのが、デザインリテラシーです。

①デザインリテラシーとは?

デザインリテラシーとは、主にデザインの造形理論、制作のプロセス、歴史・文化に対する知識などを指す専門用語。
近年は、顧客体験においてデザインが重要視されている流れを受け、デザインリテラシーをベースにした判断力が求められています。
しかしこれまで多くの経営者はデザインにそこまで着目してこず、さらにノンデザイナーであるためデザインリテラシーを身に着けていることはあまりありませんでした。
一方で米Googleや米IBMなどの外資系企業は、デザインが顧客体験の質や企業のブランド力向上に大きな役割を担っていることに気づき、早々にデザイン経営戦略にシフト。デザインをビジネスの手段として活用するようになりました。

②ブランド力の向上に重要なデザイン力

「ブランド力の向上=デザイン力の向上」と考える企業が増加し、経営戦略の中心にデザインを据える「デザイン経営」に力を入れる企業が勢いを増してきています。
2016年にはIBMが1000人以上のデザイナーを雇用したり、GoogleやFacebookがデザイン会社を買収したりというニュースも話題になりました。
日本でもこの流れを受け、一部の企業では執行役員にデザイナー出身者を就任させるなど、デザイナーが経営の意思決定を担う重要なポジションに起用される事例もではじめています。

デザインリテラシーが、会社の価値を左右する

世界でデザインに注力した経営が増え、デザイナーが活躍する幅もどんどん広がっています。日本でも、経済産業省が経営者向けにデザイン経営の勉強会を開いたり、企業がノンデザイナー向けにスクールを開いたりするなど、デザイン力を向上させるための活動が活発化しています。

①企業が独自に勉強会を開く事例も

デザインの必要性を社員に理解してもらうために企業が社内で独自に勉強会を開催する動きもあります。例えばサイバーエージェントでは2015年、大ヒットしたスマートフォンアプリの裏にデザインが関係していると気づき、社内全体でデザイン勉強会を開きました。
今後プロデュースするプロダクトの品質向上を目的としたイベントだったのですが、残念ながら反応はまずまず。それ以降、美意識を高めたりデザイン理解を深めたりするための社内制度を設けるなど、積極的な啓蒙活動を行いました。それでも、デザインやデザイナーの重要性を理解してもらうために2年ほどの歳月がかかったそうです。

②デザイナーを理解することからはじめよう

これまでの話でもわかるように、デザインリテラシーを知るということは、ひいてはデザイナーを理解するということにも繋がります。
企業がプロダクトを開発してからユーザーに体験してもらうまでの過程で、デザインリテラシーがデザイナーと共通のコミュニケーション手段となるからです。

もしデザインリテラシーを持たずに、マネジメント側が好き嫌いだけでデザインの良し悪しを判断してしまえば、それはただの自己満足となってします。
デザインリテラシーの観点からデザインを理論づけて完成させなければ、ユーザーの心には響きません。だからこそ、デザインリテラシーは、デザインを通して企業の社会的立ち位置を確立するための重要な観点になってくるのです。

デザインリテラシーを学ぶの上でおすすめの本

デザインの重要性と、デザインを中心に成長する企業の活動をご紹介しました。最後に、デザインリテラシーを学び始めたばかりの方、これから身につけようとしている方向けにおすすめの本をご紹介します。

①かたち・色・レイアウト 手で学ぶデザインリテラシー(白石学編著/小西俊也, 江津匡士著)

武蔵野美術大学が、1年生向けに使用している本。講義と実習が1冊にまとまっており、着彩道具の使い方も載っています。
パソコンを使用せず、鉛筆などを使用して実習に挑戦できるので、カフェや図書館などでも学ぶことができます。
視覚に訴えることができる色、文字の配置など、デザインリテラシーの基礎的な知識を学べるので入門編にうってつけです。

②経営とデザインの幸せな関係(中川淳著)

家業の売上を13年かけて10倍にした中川淳氏の実体験を基にした1冊。ブランドのコンセプトからコミュニケーション設計について、クリエイティブの観点から作り上げていく過程が記されています。
経営者とデザイナーが協力して、企業のブランディングを行っていくことの重要性についても解説しています。
デザイナーとうまくコミュニケーションが取れない際の指南書にもなる本です。

③デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド(ピーター・メルホルツ, クリスティン・スキナー著)

近年ビジネスにデザインを取り入れる動きを受け「デザイナーの仕事とは?」「機能するデザインチームはどのように作ればいいのか」に関して細かく解説している1冊
デザインの基礎的コンセプトから、効果的なデザイン組織、人材採用まで、デザインをビジネスに取り入れるための重要なポイントが凝縮されています。
組織におけるデザイナーとの協力体制を改善しようと考えている企業や、デザインに関して改めて勉強したい方
におすすめの1冊です。

④デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術(アネミック・ファン・ブイエン, ヤープ・ダールハウゼン, ほか3名著)

世界最高峰のイノベーター集団「デルフト工科大学」
この大学の工業デザインエンジニアリング学部で使用されている、プロダクトデザインのアプローチ・デザイン手法・視点を紹介する1冊です。特定のプロダクトにおいて、ユーザーがどのような問題をかかえているのか、その問題をデザインの観点から解決するためのヒントも記載されています。
また、デザイナーがどのようにデザイン戦略を考えているのか、ポイントとなる7つの過程も知ることができます。
デザインリテラシーを学んだうえで読んでみると、理解がより深まります。

⑤世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」(山口周著)

近年、企業がこぞって力を入れている美意識教育
世界的なアートスクールに企業の幹部を送り込んだり、広告代理店が人知れずデザイン会社を買収したりなど、実際に起こった出来事を例にその背景を解説しています。
美意識の観点から、プロダクトを作る際に必要な視点や、個人で美意識を磨く方法を紹介しているのも魅力デザインリテラシーを向上させるためのヒントを得ることができます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
デザイナー採用担当の方は以下もチェックしてみてください。