2019年2月22日、サイバーエージェントが開催する全社技術カンファレンス「CA BASE CAMP 2019」が行われました!
2017年にデザイナーとエンジニアそれぞれで全社カンファレンスを実施。2018年には両職種合同で第1回「CA BASE CAMP」を開催し、今年で第2回目となります。
今回のテーマは「CONNECT + CREATE」。「職種の壁はもちろん、所属の壁を超えて繋がることで、また新たな価値を生み出してほしい」という思いが込められています。

一般には非公開かつ、社内でも技術職のみが参加可能なこのイベント。2,000人を超えるサイバーエージェントのエンジニア・クリエイターが、自由参加にも関わらず大勢集まります。
社内限定とはとても思えないほど大規模な本カンファレンスでは、日本を代表するクリエイターが多く在籍する同社だからこその豪華なセッションに加えて、ゲームや最新コンテンツなど8つの出展ブースも。
今回はその貴重なイベントにご招待いただき、セッションやブースの一部をレポートします!

開場の挨拶:代表取締役社長 藤田 晋

「ひとつの会社で、これだけ大きな技術カンファレンスをやるのは国内でも他にない取り組みだと思います。」という挨拶からイベントはスタート。
日本の中でいろいろな分野の第一人者を探したときに、意外と社内にいるんじゃないかと気付きました。」と話す藤田社長。今回のイベントを通してエンジニア・クリエイター同士のつながりを強めるとともに、サイバーエージェントのパブリックイメージとして「技術力の高さ」をアピールしていくこと。そして子会社単位でさまざまな事業を行っている同社において、転職せずともキャリアプランを考え直すことができることについて触れました。

さらに長年社内で議論されていたエンジニア出身の役員の不在について、昨年10月に長瀬慶重さんが役員に就任したことによって、さまざまな課題に取り組んでいくという意思を改めて表明し、長瀬さんの基調講演へと移ります。

基調講演「技術政策2019」:取締役(技術開発管轄) 長瀬 慶重

2018年は「BASE」をテーマに、管轄を跨いだ7名の技術者と組織した「技術政策委員会」の発足や、エンジニアの声を経営に届ける「テク揚げNIGHT」などの施策を実施。他にも人事組織の強化や評価制度の改善など、テーマ通り土台を頑丈にする取り組みを多く行ってきました。

そして2019年のテーマは「CONNECT」。
「現在社内にはさまざまな技術開発を日々行っている2,000人以上の技術者がおり、その資産をもっとつなげて活用していきたい。そのために、誰が何を知っているのかという情報を共有することで、組織学習を促進する取り組みである『トランザクティブメモリー』の考え方を進めていきたいと考えています。」と話しました。

デザイナーの成長と事業の成長がリンクし、自走するデザイン組織

近藤圭|株式会社CAM(元:シーエー・モバイル)

東京藝術大学大学院を卒業した近藤さん。油絵から現代美術までを学び、さまざまなインスタレーションの制作などを行ってきました。2010年にCAMへ入社し、現在は占いやライフスタイル事業を中心に、数々のサービスのディレクションやマネジメントを行っています。

センス残高の低下

占いやライフスタイル事業、ファンビジネスや新規事業にも取り組む同社。さまざまなサービスをひとつの会社で運営する中で気づいたことは、

  • 成功ノウハウを展開しやすい
  • サービスAで試せないことをサービスBで試すことができる

というメリットと

  • トンマナやルールを混同することがある、似てしまいがち
  • 技術アップグレードコストがかかりがち

というデメリット。
そして、同じ事業・複数サービスに長期で関わることで、デザイナーとしてもメリットとデメリットが。
事業やサービスの理解が深まったり中長期での戦略に関われたりする一方で、ディレクターのデザイン要求レベルを基準にしてしまう新しい大きなチャレンジがしにくいということが発生します。

その中でも特に注目されるデメリットが「センス残高が低下する」ということ。はじめはセンスの塊と思われた人でも、同じようなデザインを繰り返すことで、アウトプットのクオリティが低下していく現象が起こってしまう
事業と寄り添うことでの信頼関係は必要だが、デザイナーとして常に成長できる環境は用意していかないといけない。それはデザイナーそれぞれの課題でもあり、組織としても向き合っていかなければならない課題だと言います。

センス残高の枯渇にどう対処するか

ではその課題にどう向き合ったのか。CAMでは「デザイナーロワイアル」「天下一品」というワークショップを実施。

「お題」となるサービスに対して課題を発見して改善案を作成、クリエイティブ統括である佐藤洋介氏が採点とアドバイスを行います。サービスの改善と、デザイナーの提案力・分析力アップが同時にできるイベントです。
参加者からは、日常的に携わっているサービスがお題になるからこそ、客観的に評価されることでもう一度フラットな目線を取り戻すことができるなどのメリットがあったとの声が。

もうひとつ大切にしているのは、インプットとコミュニケーション。アートやデザインはもちろん映画やエンターテインメントなど、幅広くインプットすることを目的とした展覧会ツアーを開催。
インプットするだけではなく、自分でどう捉えたか・どう説明すれば人に伝わるかを考えて、アウトプットすることも大切にしています。

さらにチャットツール「Slack」にデザインに関連する情報を誰でも投稿できるチャンネルを作成したり、定例会議で「好きなプロダクトデザイン」「これはダサいと思ったCD」などのお題を設定して発表したり。日常的なインプットも意識的に行っています

デザイナーのモチベーションを高める評価方法

そうしてセンス残高を貯め込み、成長していける環境の中で、デザイナーを評価するしくみもまた重要です。
CAMでは、「技術」「設計」など細かいスキル評価もある中で、「事業サービス貢献評価」を設定。
デザイナーであっても、売り上げやサービスの退会率・広告のCVRなどの定量的目標を立て、「サービス成長に貢献=評価として返ってくる」仕組みを確立しました。そうすると、査定前にデザイナーから「どのように貢献したか」のアピールが活発に。それが当たり前の文化となり、よりサービスに貢献したくなるサイクルが回ります。

これらが活発に行われることで、デザイナーは事業成長のために欠かせない、さらには部署・事業・会社が変わっても輝ける市場価値の高い人材へ成長。
市場価値の高いデザイナーが集まることで、デザイナー一人ひとり、サービスそれぞれが自走するデザイン組織へと進化していくことができるのです。

クリエイターのマネジメントとは何か?組織と個人を強くする仕組みづくり

井上辰徳|株式会社サイバーエージェント

2011年にデザイナーとして中途で入社した井上さん。サイバーエージェントでは主に新規プロジェクトのデザインに携わっています。昨年のCA BASE CAMPにも登壇し、その際は「デザイナーが伸び悩まないためのスキル27分類」についてプレゼン。そこで、デザイナーの持つべきスキルとして “リーダースキル”の重要性を紹介しました。今回はそれを踏まえて、さらに一歩深く「マネジメント」についてのお話です。

“リーダースキル”から“クリエイティブマネジメントスキル”へ

井上さんは昨年、デザイナーの“リーダースキル”についてお話ししてから、思考を深めるうちに「ちょっと違うかも……」と思い始めたそう。
紹介したリーダースキルは、“マネジメントスキル”と言い換えて良さそうだと考えました。それを紐解くにはまず、デザイナーの特性について考えていきましょう。

そもそも、デザイナーがデザイナーになる動機として「他者に褒められた」という経験はとても多い。つまりデザイナーは、他人の満足を自分の満足につなぐことができる人種。他人の目標に対して全力で考えて行動することができるのです。
また最近のデザイナーには、経営や事業責任者のビジョンをビジュアル化・言語化することで、より鮮明なものへとエクスポートする役割、フォローアップするような役割が求められています。
つまり、デザイナーには本来“フォロワーシップ”が備わっており、さらにそれが現在求められている素養の一つでもあるのです。

ここで「マネジメント」について考えてみると、マネジメントスキルは「そのためにどうするか」を考えるスキル。これはフォロワーシップを素養として持つデザイナーには得意分野なのではないか、ということです。
つまりデザイナーのスキルとして必要なのは、“リーダースキル”改め、“クリエイティブマネジメントスキル”だと思い至ったのです。

職務ではなく「クリエイティブマネージャー」という役割を

そして井上さんは、社内のマネジメント強化施策として「クリエイティブマネージャー(CM)」という役割をつくりました。アートディレクターやデザイナーといった職務における肩書きとは別の、役割に対する肩書きです。
その背景には、井上さんが所属するメディア管轄においては幅広い事業やプロジェクトがあり、一定のスキルセットを定義して職種を割り当てられないというものがありました。そのため、スペシャリストとしての領域とマネジメントを行う領域を分けて考え、チームのクリエイティブ責任者として必要な役割をCMとしました。

具体的には

  • 事業視点
  • クオリティの責任
  • 育成・評価

の3つの要素が求められます。
この制度を開始してから、CMを育てる合宿の開催や1on1の強化、覚醒できるような状況をつくるにはどうすれば良いかを考える「Awake会議」を行うなど、日々さまざまなことを試みています。

横のマネジメント:クリエイターハングアウト

CM制度を用いて事業部ごとに縦のマネジメントを行う一方、横のつながりを生む「クリエイターハングアウト(HangOut)」という取り組みも行っています。
いくつかのグループにわけて、定例でデザインの共有会や勉強会、オリジナルイベントを開催。半年に一度、グループはシャッフルされます。
この取り組みで活躍するのはMC(司会者)。グループの中心となって、コミュニティを盛り上げます。
MC同士でも会合を開いて話題を共有し、さまざまな体験から刺激を受けられる環境を保ち続けています。

最新技術とクリエイティブに触れる8つのブース出展

合計54ものセッションの他に、さまざまな部門から8つのブースも出展。非公開の最新技術も見られる、まさに社内限定ならではの内容でした!

入場してまず目に入るのは、スマホゲーム「Kick-Flight」の体験ブース。用意されたスマホを使って、配信前の新作ゲームをチームでプレイします。なんと同じチームには開発者の方が……!他では絶対にできない体験でした!

スマートフォンがズラッと並ぶのは「Dancing Cyber」。3DCG関連コンテンツ制作を行う「AVATTA」のスタジオで3Dスキャンされた社員の方々が、画面の中でさまざまなダンスを踊っています。パンツ1枚の社員から藤田社長まで、キレッキレの動きから目が離せませんでした!

サイバーエージェントが提供する音楽ストリーミングサービス「AWA」からは、昨年発表されたARインスタレーション「CONNECTED by AWA P[AR]TY」を展示。AI Lab・ロボット事業部・AbemaTV・CyberZなどさまざまな部門から有志で集まった技術者チームで制作した作品とのこと。
Twitterアカウントとリンクした「奇妙なアバター」同士がAR上で勝手にマッチングして会話します。後から会話履歴をみることでより楽しめる、新感覚のコンテンツでした!

マッチングといえば婚活。婚活といえば、ロボット婚活……?アドテク スタジオからは、ニュース番組でも取り上げられた、ロボットが参加者の代わりに会話をしてくれる婚活パーティーの体験コーナーが。
男女と一緒にロボットも向かい合い、あらかじめプログラムされた趣味などの情報を会話するそうです。開発者の方にお話を伺ったところ、「目の前にいるのに直接話せないもどかしさが、もっと話したい!という気持ちにつながるんです」とのこと。
他にも複数名へ同時に接客ができる、聖徳太子のようなペッパーくんも紹介されていました。

社内の部活動「フィジカルコンピューティング部」は、Maker Faire Tokyo 2018へも出展したロボットを紹介。5体の独立したロボットたちが情報を共有しあっており、ひとつのロボットに手を近づけると、すべてのロボットが一斉にそちらを振り向きます。無心で手を差し出し続けてしまう、不思議な魅力がありました。
社内の部活動は、退社後に集まって行っているそう。仕事上では関わらない技術者たちが部活動を通して交流を持ち、情報交換や親交を深められるのも、多くのエンジニアが在籍するサイバーエージェントならではだと感じました。

最後に訪れたのは、Abemaグッズを販売している「Abema House」のブース。この日は「Abema House Stand」として外苑前の店舗から出張販売をしていました。
サイバーエージェントの総合クリエイティブディレクターを務めるNIGO®️氏監修のグッズは、ソフビのフィギュアやスマホリング、カステラの老舗「文明堂」別注の本格カステラまで種類がとても豊富です。
企業のキャラクターとしてだけではなく、独立した存在として人気のあるアベマくん。参加者からも常に人気のブースでした。

最後に

サイバーエージェントの技術者限定で行われた「CA BASE CAMP」。「クリエイティブで勝負する」を掲げる同社のクリエイティブ力のみならず、多様なサービスを自社で手がける圧倒的な技術力も見せつけられました。
強制参加の勉強会ではなく、参加した社員を楽しませるコンテンツをいくつも用意して、行きたくなるイベントに仕立てるサイバーエージェント。自主的に学ぶモチベーションを後押しする同社の姿勢は、社員の成長に悩む全ての企業の参考になると感じました。

<取材・執筆:シンドウサクラ>